葛西臨海水族園世界の海エリア「南アフリカ沿岸」水槽で、ロックサッカーの稚魚の展示を始めました。
ロックサッカーは最大全長30センチにもなる大型のウバウオのなかまで、メスは岩などの表面に直径1.4ミリほどの卵を数百個産みつけます。
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「ロックサッカーの産卵」(2011年06月10日)
2012年に水族園ではこの魚の繁殖にチャレンジしました。当初、水槽で孵化した仔魚を回収しようとしましたがうまくいかず、効率よく仔魚を回収するために色々と工夫をして、元気な仔魚を得ることが出来ました。
孵化した仔魚は全長6ミリで、小さな尾びれを一生懸命動かして、水面近くや水中を泳いでいました。孵化後3日目から小さなワムシを食べ始め、2週間後には少し大きい餌のブラインシュリンプを食べるようになりました。ブラインシュリンプを見つけた仔魚は、体をS字にくねらせながら狙いを定め、勢いよく飛びついてガブッと餌を食べます。この小さい体で一丁前に狩りをするようすが興味深く、私は何度も見入ってしまいました。
孵化後1か月が経ったころ、仔魚たちの体と生活に大きな変化が訪れました。細長かった体は、次第に親と同じ頭でっかちの体になり、今までの遊泳生活を止め、水槽の底や壁に張り付くようになりました。ウバウオのなかまは、吸盤のように変化した腹びれで岩などに張り付いてくらしますが、全長1.5センチほどの小さな体で、すでに大人と同じ生活が始まります。
今回展示した稚魚は、親の全長の10分の1くらいの大きさです。小さいブラインシュリンプを相変わらず地道に食べ続けていますが、細かいミンチ状にしたゴカイなど、成長に合わせて少しずつ大きい餌も食べられるようになっています。
同じ水槽にいる大人のロックサッカーは今でも時々産卵しているので、運がよければ稚魚だけでなく、オスが卵を保護しているようすも見られます。飼育担当者にとっては夢の親子2世代展示になりましたのでぜひ見に来て下さい。期間限定ですのでどうぞお早めに。
写真上:展示水槽、奥の壁に親魚が張り付いている
写真中:孵化直後の仔魚
写真下:稚魚
〔葛西臨海水族園飼育展示係 堀田桃子〕
(2013年05月03日)