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ゲジの孵化
 └─多摩  2013/01/04

 2012年8月20日朝、ゲジ1頭を飼育していたケースに、数ミリほどのたくさんの虫がうごめいていました。8月1日に捕獲したばかりのゲジが産卵し、幼体が孵化していたのでした。

 ゲジのメスは土中に130〜290個の卵を産みます。14〜20日後に孵化した幼体は、16〜18回の脱皮を経た後、孵化後3年目になって繁殖し、寿命は3〜4年との報告があります。

 たくさんの長い脚を動かしてすばやく走る姿から嫌われることの多いゲジですが、同じムカデ類の中では最も脚の数が少なく、15対30本です。

 「脚の数がもっと少なければ、ゲジもこれほど嫌われないのにね」という同情の声も聞こえてきそうですが、じつはゲジの幼体は成体よりも脚の数が少ないのです。ゲジの幼体は、脱皮とともに胴部の体節と脚の数を増やしながら成長し、ある時点で成体と同じ節の数に達すると、以降は脱皮しても節は増えなくなります(半増節変態)。顕微鏡で孵化直後の幼体を確かめると、脚の数は4対8本でした。

 また、ゲジが属するムカデ類の多くは、数個の単眼で構成された小さな目をもっていますが、ゲジは数千個の単眼が集まった「偽複眼」をもっているので、よく見ると目が大きく、かわいらしい顔をしています。このように、孵化直後のゲジの姿を見ていただければ、ゲジのマイナスイメージも少しは和らぐのではないでしょうか。
 さて、ゲジの脚の数は成長に伴ってどのように増えていくのでしょうか。しっかり観察しようと思いつつ、気付いたときには幼体は15対30本の脚をもつ親と同じ姿に育っていました。

写真上:孵化直後の幼体、脚は4対8本
写真下:孵化後4か月の幼体、脚は15対30本

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 田畑邦衛〕

(2013年01月04日)



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