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クモヒトデとヘビの意外な関係
 └─葛西  2012/12/14

 2012年も残り1か月を切り新年が近づいてきました。来年の干支は巳です。そこで、葛西臨海水族園「東京の海」エリアでは、ヘビにちなんだ生き物としてクモヒトデの干支展を始めました。

 さて、クモヒトデとヘビにはどんな関係があるのでしょうか? クモヒトデの特徴である細長い腕をヘビの尾に見立てて、クモヒトデ類(綱)を指す学名はOphiuroidea(Ophis=ヘビ、ura=尾、oid=のような)です。このことから、クモヒトデのなかまを「蛇尾類」と呼んでいます。また、同じクモヒトデのなかまに属するテヅルモヅル類(科)の学名Gorgonocephalidaeは、ギリシャ神話に登場する、髪の代わりに生きたヘビが生えた怪物ゴルゴーンから名付けられました。

 今回展示した中でアカクモヒトデ、オオクモヒトデ、クロクモヒトデ、ゴマフクモヒトデは、5本の腕をもつ基本的な形のクモヒトデです。

 一方、ツルがからまったような不思議な姿のセノテヅルモヅルは、腕が何本もあるかのように見えますが、よく見るとほかのクモヒトデと同じく、中央の体からは5本の腕が出ていて、先が次々と枝分かれしていることが解ります。水槽では、この腕を時折ゆっくりと動かしているようすを間近で見ることができます。

 クモヒトデは円盤状の体(盤)に基本は5本、まれに6本の腕をもつ生き物です。盤の下側の中央には口があり、口の中には袋状の胃があるだけで、この口が肛門でもあります。
 クモヒトデのなかまは、海底の表面や物陰や砂に潜って生活しているほか、カイメンやサンゴのなかまなどほかの動物に巻きついているものもいます。海の浅い所から深い所まで幅広い場所に生息していて、種によって大きさや体色、模様のバリエーションが豊かな生き物です。
 食べているものもさまざまで、水中を漂う細かい栄養物や海底の堆積物、獲物を捕らえる肉食や腐肉食、さらにはこれらの食性を状況によって使い分けてるものも多くいます。
 クモヒトデの腕は、小さな骨板が連なった造りをしていて自由自在に曲がり、餌を捕まえて口に運ぶときやすばやく移動するときなどに、巧みに動かします。

 水槽の中にいるクモヒトデは夜になると活発に動き回りますが、日中は物陰に隠れがちで、細長い腕だけを外に向かって伸ばしているところが見られます。この腕は「蛇の尾」のように見えるでしょうか? いろいろな種類のクモヒトデを見比べてみてください。

写真上:クロクモヒトデ
写真中:物陰から伸びるクロクモヒトデの腕
写真下:セノテヅルモヅル

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三浦絵美〕

(2012年12月14日)



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