北極の海というとどんなところを思い浮かべるでしょうか? 冬は氷に閉ざされ、夏でも冷たく、さみしい海を想像されるかもしれません。でも、北極の海の中は、栄養塩が豊富で氷の下でさえも微細な藻類が育ち、それを餌とする動物プランクトンが増え、それを食べる甲殻類や魚類などが多く生息できる、意外に生物の量が多い豊かな海なのです。
葛西臨海水族園の「北極」の水槽でも、この北極の海らしさを見ていただけるよういろいろな種類の生物を展示してきました。これまでも何度か紹介してきたナマコのなかま(スカーレットプソルス、オレンジフッテッドシーキューカンバー)や、アカキタトサカ、イソギンチャク、魚ではハーフバードパウト、ツーホーンスカルピンなど、小さな水槽に種類も数もたくさん入れていました。しかし肝心の主役となる魚たちが、底生性で海藻の影や石の隙間でじっとして動かないため、魚がいないように見える状態が続いていました。
そこで、何もいない中層に泳ぎ回る魚を入れようということになり、入手先を探していると、カナダのバンクーバー水族館からタラのなかまのアークティックコッドを分けていただけることになりました。これは北極海に広く分布し、成長がゆっくりで天然でも最大で全長30センチくらいまでにしかならず、タラ科としては小型の種類です。
まず水槽内に小さな石組を作り、展示している生物も少し数を減らし、そこにまだ全長10センチくらいのアークティックコッド5尾を入れてみることにしました。この新入りは今のところ狙い通り、水槽の中でせわしなく泳ぎ回っています。
この水槽は「世界の海」エリア順路の最後の方にある深海コーナーを過ぎたところにあります。模様替えして雰囲気の変わった北極の水槽をぜひごらんください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕
(2012年11月23日)
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