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「西なぎさ」から救われた魚たちのその後
 └─葛西  2012/11/16

 2012年9月27日、葛西臨海水族園近くで「青潮」が発生し、波打ち際に集まった魚の一部を水族園に持ち帰ったことをお伝えしました(下記リンク)。

「エメラルドグリーンの海!?青潮に襲われた西なぎさ」(2012年10月20日)

 水族園では月に1回、目の前に広がる「西なぎさ」の生物調査をおこない、採集した生物の一部を「東京の海」エリアの「葛西の海」水槽で紹介しています。季節によって展示する種類も変わるのですが、今回は、青潮の紹介と、青潮発生時に持ち帰った生物のうち、ボラ、マハゼ、シロギス、アカエイ、マゴチ、イネゴチの6種を展示することにしました。

 青潮のときに採集したアカエイは体の幅が約15センチ、ほかの5種は全長10センチ前後です。河口に生息するボラやマハゼは、今までの調査でも同じくらいの大きさの個体が見られましたが、シロギスやマゴチは成長すると沖合に行ってしまうのか、これまで全長3センチほどの幼魚が獲れるだけでした。イネゴチは初確認です。シロギス、マゴチ、イネゴチの3種は、青潮によって沖合から波打ち際まで追いやられてしまったのだと思われます。

 水槽内ではアカエイが目立ちますが、ほかの5種は地味なので区別がつきにくいかもしれません。観察ポイントは「水槽のどこにいるか」です。ボラは水面から中層、シロギスは中層や底層をゆっくりと泳いでいます。マハゼは底砂の上にたたずんでいます。マゴチやイネゴチは砂に潜ってじっと獲物を待ちかまえています。とくにマゴチはイネゴチに比べて臆病なのか、ほとんど隠れたままですが、よく見ると砂の中から目だけを出しているはずです。
 一見海の中で砂地が広がるだけの単調な環境にも、じつはいろいろな生物が、それぞれ棲み分けて生活しています。青潮から一命を取り留めた魚たちが、その生活ぶりを水槽で垣間見せてくれています。

写真:マゴチ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 齋藤祐輔〕

(2012年11月16日)



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