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サバンナの繁殖裏事情
 └─多摩  2012/10/05

 多摩動物公園のサバンナでは、同じ放飼場の中にキリン、シマウマ、オリックスという3種類の草食動物が群れでくらしています。それぞれにオスが1頭ずついますが、いつも群れの中で過ごしているのはキリンだけで、ほかの2種のオスは、ふだんは別の少し狭い放飼場に単独で過ごしています。

 この3種の動物は1年中繁殖が可能なため、子どもが生まれる時期もバラバラで、暑いときも寒いときもあります。キリンは寒さに弱く、冬場の出産の場合は室温を高く保つためにボイラーを使用しています。このボイラーはキリン舎にしか使用できないため、シマウマやオリックスの防寒対策は、扉を閉めたり、寝わらを厚く敷き詰めたりといった方法で対応しています。

 しかし、シマウマやオリックスはキリンほど寒さに弱くはないので、冬場の出産も暖房なしでちゃんと育つのですが、暖かい時期に生まれてくれたほうが動物にとっても我々にとっても心配の種が減るのは確かです。

 そこで、数年前から4〜6月にシマウマ、7〜9月にオリックスのオスを群れに同居させることにしました。シマウマの妊娠期間が約420日、オリックスが約250日なので、春にオリックス、夏にシマウマが生まれることになるからです。

 また、メスの発情周期はシマウマが約30日、オリックスが約20日なので、3か月の間に3、4回交尾のチャンスが訪れることになり、短期間の同居にくらべて妊娠の可能性も上がります。メスは複数いるので、たくさんの子どもができる可能性はありますが、今までのところ、それで困ったことはありません。どちらかというと、妊娠して欲しい個体が妊娠しないことが多いのが実情です。
 血統管理上、出産が一部の個体に片寄るのは好ましくありませんが、シマウマもオリックスも国内飼育頭数が少なくなってきており、悩ましい問題です。

 ちなみに、シマウマのオスとオリックスのオスを同時期に同じ放飼場へ出すとケンカをしてしまう可能性が高いため、一緒に出すことはありません。キリンのオスとはそれぞれ争いがないので安心して同居できますが。

 2012年もシマウマ、オリックスそれぞれのオスの同居が無事終了しました。交尾も確認できたので、来年の春と夏にかわいい子どもたちが誕生するかもしれません。まだ妊娠しているかどうかわかりませんが、そのうちお腹が大きくなる個体が現れるかも知れませんよ。

写真上:オスのオリックスとメスの群れ
写真下:単独でいるオスのオリックスとシマウマ

〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水勲〕

(2012年10月05日)



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