今回紹介するのは、多摩動物公園で2012年1月2日から新たに展示を開始した「ヤシガニ」です。姿は知らなくても、名前だけなら聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。タカアシガニには及ばないものの、ヤシガニは陸上で生活している甲殻類(エビ・カニなど)の中では世界最大の種といわれ、甲殻類だけでなく、陸上でくらす節足動物(昆虫・クモ・ムカデなど)全体からみても最大級です。
大型の甲殻類ではよくあることですが、寿命が非常に長く、数十年生きるといわれています。以前の記事で紹介した「タカアシガニ」同様、成長が非常に遅いため、成体になるには10年近くの年月を必要とします。
東南アジアやインド洋に浮かぶ島々や日本の沖縄諸島などに分布していますが、最近は食料用の捕獲などで減少しており、日本では絶滅危惧II類に指定されています。
「ヤシ」ガニなのでヤシが主食に思えますが、なんでも食べる雑食性で、現在昆虫園で与えているのは、サツマイモ、リンゴ、ゆで卵、ドッグフードなどのペレット等さまざまです。
「カニ」という名のとおり、広い甲をもってますが、じつはカニではなく、貝殻を背負わずにくらすヤドカリのなかまです。ヤドカリがもつ尾のような腹部(本来貝殻に入っている部分)は、小さな脚と一緒に内側にたたみこまれていて、ふだんはよく見えません。
力の強さはふつう見られる昆虫たちとはケタ違いで、10キログラム以上の重さのものでも難なく動かします。
現在多摩で飼育しているのはまだ小さい個体ですが、それでも水槽の上に載せた8キロ以上のおもりをどかしました。展示のレイアウトもすぐに壊してしまうため、毎日のメンテナンスが大変ですが、動きまわるのは閉園後の夜間なので、開園中に壊されないのがせめてもの救いです。
人の動きが分かる程度には眼が良いようで、あまり驚かさないよう注意はしていますが、水槽の周りで作業しているとかなりの勢いでハサミを振り上げて反応することがあります。大きな音や振動なども嫌がるので、観覧されるときには優しくゆっくりこっそり(?)見てあげて下さい。
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「巨大生物シリーズ1」(2012年01月13日)
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「巨大生物シリーズ2」(2012年01月20日)
写真上:展示中の個体
写真下:折りたたまれている腹部
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 渡辺良平〕
(2012年01月27日)