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家はちぎれた海藻
 └─葛西  2011/10/28

 港の堤防から海をのぞき込んでみると、ちぎれた海藻が漂っていることがあります。海藻の周りをよく観察してみましょう。小さな魚が泳いでいませんか?もし、網を持っていたらソッとすくってみてください。いろいろな魚の子どもが見つかるかもしれません。
 海面を漂っている海藻を「流れ藻」と呼びます。よく見られる流れ藻は、ホンダワラ類の海藻です。流れ藻の周りにはアミメハギやギンポ類、トビウオ、ブリなどさまざまな魚の子ども(稚魚)が見られます。とくにブリの稚魚はモジャコ(藻ジャコ)とも呼ばれます。

 では、なぜ流れ藻に稚魚が集まるのでしょうか? 流れ藻には魚の卵が産み付けられていたり、ヨコエビなどの小動物がいるため、稚魚たちの良い餌場になります。また、流れ藻に隠れることで捕食者から身を守ることもできます。とくに、沖合の表層は海底や沿岸と違い、岩場など身を隠せる場所がないため、流れ藻は重要な隠れ場所となります。一見ゴミのように見える流れ藻も、一部の稚魚にとっては重要な生活環境です。さらに、流れ藻とともに移動することは、結果的に分布域を広げることにも繋がります。日本近海だけでも100種以上の魚類が流れ藻で確認されています。

 葛西臨海水族園の「東京の海」エリアにある実験展示コーナーでは、アミメハギやニジギンポ、オヤビッチャ(スズメダイのなかま)など、流れ藻で生活する稚魚たちを期間限定で展示しています。
 今回の展示を通して、ぜひ流れ藻とともに大海原を旅する稚魚たちに思いを馳せてみてください。

写真:流れ藻のなかのオヤビッチャ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 齋藤祐輔〕

(2011年10月28日)



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