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ヒマラヤタールが見やすくなりました
 └─多摩  2011/07/29

 「ヒマラヤタールが見やすくなりました」と題しても「ヒマラヤタールって多摩動物公園にいた?」と思われる方、「そもそもヒマラヤタールってどんな動物?」と思われる方も多いかもしれません。私も知人に仕事を紹介するとき「ヒマラヤタールを担当している」と言って、すんなり会話が進んだことがありません。

 そんなヒマラヤタールですが、以前より多摩動物公園正門からオランウータンに続くメインストリートに面した、大変立地の良いところにいます。しかし、運動場のフェンスが園路からずいぶん離れたところにあり、はるか上の方に「なんかいる!」という具合にしか見えませんでした。昼の休息時には座りこんでしまい、下から見た運動場はもぬけの殻状態。

 2011年5月にムフロンの運動場が増設されたので、ムフロンを一つ左の運動場に移動させ、ヒマラヤタールの展示は、ムフロンの岩の運動場と今までのひっそり運動場をつなげ、広々とした空間にしました。

 岩の運動場を利用することで、ヒマラヤタールの特徴が見えてきました。 ムフロンは、岩の上段と下段との間の平らな道をよく歩いていましたが、ヒマラヤタールは、わざわざ足場の悪い岩の上を歩きます。くつろぐときでさえ、安定した平地ではなく、しばしば岩の縁のわずかなくぼみに張り付くように座っています。大きな体で身軽に岩場を登り降りする姿は、ヒマラヤ山脈の断崖でくらす姿を垣間見たようで、毎日見ても「かっこいい!」と惚れ惚れします。

 また、ムフロンとヒマラヤタールがフェンス一枚で隣どおしになったため、同じヤギ属を比較することも容易になりました。
 ヒツジの原種であるムフロンが人に馴れやすいのに比べ、原始的なヤギであるヒマラヤタールはまったく慣れません。餌が欲しく寄ってきても「人には近づきたくない」、そんな彼らの揺れる心が見てとれます。

 一方、餌しか見えていないムフロンは、人がいようがいまいが関係ないといったようすです。

 ヒマラヤタールもムフロンもメスは群れでくらしますが、ギュッと寄り添うムフロンに比べ、ヒマラヤタールはポツリポツリとなんとなく群れているといったように見えます。ヒマラヤタールはパーソナルスペースがムフロンより広いようです。餌が食べたくて強い個体のパーソナルスペースに弱い個体が入ってしまうと、ケンカがはじまります。ヒマラヤタールはムフロンとは異なり、メスにも角があるので、ケンカが本格化するとケガにつながります。そのせいか、メス群14頭が集結するのは餌の時間の最初だけで、弱い個体は岩場の影で1頭で過ごしています。

 標高3000~3600メートルの山岳地帯にすむヒマラヤタールにとっては、厳しい暑さが続いているので、日中は日陰の多いひっそり運動場でくつろいでいることが多いようです。ぜひ、午前中と夕方をねらって身近になったヒマラヤタールをごらんください。

写真上:岩の運動場最上段からの眺め
写真中:岩場に張り付くように座るヒマラヤタール
写真下:ケンカ中

〔多摩動物公園南園飼育展示係 友岡梨恵〕

(2011年07月29日)



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