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今年もカリガネが繁殖しました
 └─井の頭 2011/05/27

 カリガネはガン・カモのなかまで、環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に指定されており、井の頭自然文化園では東京都のズーストック種として積極的に繁殖に取り組んでいます。

 そのカリガネが2010年に続いて、今年(2011年)も繁殖しました。今年は、2羽のメスで一つの巣を共用するなどのハプニングがありひなが孵るか不安でしたが、去年より2週間ほど遅い5月23日に無事1羽が孵化しました。

 この日の朝、掃除と餌やりをするために展示場に入ると、オスの行動が明らかにいつもと違います。展示場にはこのペアのほかにオス1羽、メス2羽がいるのですが、メスのうちの1羽でも抱卵しているときに巣に近づこうとすると、オスは「シャーッ」という威嚇音を出して、担当の私にも向かってきます。

 「もしや、これは!」と思い、威嚇してくるオスに気をつけながら巣の中をそっと覗いてみると、いました! メスが座っているすぐ近くに1羽のひなを確認できました。もうすっかり体の羽が乾き、元気に鳴いています。

 正午過ぎにひな用の餌をもってようすを見に行くと、メスが巣から離れ、ひなを連れて歩きまわっています。ひなは、まだおぼつかない足取りでときどき転びながらも、一所懸命に歩いています。ちなみに今年の産卵は、2卵でしたがもう1卵をメスが再び抱卵する気配がないので、取り上げ検卵したところ残念ながら発生が止まっていました。したがって、今年の繁殖はこの1羽だけになりそうです。

 しばらくひなを観察していると、先ほど置いた小松菜やキャベツなどの餌をついばみ始め、ひなが発達したかたちで孵化してくる早成性の鳥とはいえ、しっかりしているなあと感心してしまいました。今のところ、ひなは親の体の中にもぐっていることが多いのですが、成長はとても早く、親の後をついて歩くかわいらしい姿が見られるのは1か月ほどです。どうぞお早めにごらんください。

写真上:カリガネの親子
写真下:カリガネのひな

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 川手美咲〕

(2011年05月27日)



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