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ニシツノメドリの巣立ち
 └─上野  2010/10/29

 上野動物園西園のニシツノメドリ展示場には、現在12羽が飼育されています。そのうちの2羽が2010年7月に孵化し、巣立ちの時期をむかえました。

 ニシツノメドリは毎年6月ごろになると展示場の巣箱内で産卵します。今年は2組のペアが6月13日と6月19日に産卵し、オスとメスが交替で抱卵しました。そして、どちらも38日目で孵化し、その後巣立ちを迎えるまでの間、やはり雌雄交替でひなの世話をしていました。

 孵化したてのひなは、黒いモコモコの綿羽で覆われていて、どこが顔なのかさえわからず、まさに黒い毛玉です。毎朝、確認のため巣箱内をそっとのぞくと、黒い毛玉がもぞもぞと動き、親鳥たちは「なによ!」と言わんばかりの顔で見上げてきます。「ごめんごめん」と言いながら、ひなが無事なことにほっとして、巣箱のふたを閉じていました。

 こうした日が続き、少しずつひなたちは巣穴から顔をのぞかせるようになりました。このころ、顔などはまだまだあどけないのですが、全身を覆っていたモコモコの綿羽は生え換わり、ツノメドリらしい姿に変化していきます。

 今年の2羽のひなは、34日令と48日令で巣立ちました。巣穴から顔をのぞかせていたと思うと、意を決したように巣の外に出てきました。初めは入口あたりをウロウロして、すぐに巣の中に戻っていましたが、徐々に巣を離れる距離が長くなり、プールで泳いだり潜ったり、活発に動き回るようになりました。今では、巣に入ろうとするひなを親鳥が追い出しています。

 ひなを見分けるポイントはくちばしです。成鳥は赤い大きなくちばしですが、今年孵化した2羽のくちばしはまだ小さく、色も黒っぽいため、よく見るとちがいがわかります。

 繁殖期も終わって、巣穴に入る個体は少なく、展示場内の陸地や岩場などにちょこんと座っているすがたがよく見られます。ぜひ今年生まれのニシツノメドリを探してください。

写真上:巣の中の黒いひな
写真下:くちばしの色の違い

〔上野動物園西園飼育展示係 齋藤圭史〕

(2010年10月29日)



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