イカの多くはほぼ1年で成熟し、産卵を終えると力尽きて死んでしまいます。コウイカの寿命も1年で、東京湾付近では3月から6月ころが産卵期にあたるため、これからしばらくは親コウイカが見られなくなります。
現在、「東京の海」エリアにある展示水槽「東京湾にもいるこんな生き物」ではコウイカが産卵していて、海藻や水位センサーに直径1センチメートルほどの、やや細長い砂団子のような卵のうをたくさん産みつけています。
卵のうの表面には砂がまぶしてあり、中に卵がひとつ入っています。砂をまぶしたというよりも砂でできた団子に見えるほど、びっしりと砂がついています。
卵は一粒ずつていねいに海藻や木の枝のようなものに産みつけられます。産みつけてから砂をまぶすのか、砂をまぶしてから産みつけるのか、ようすを見ていても、一連の行動は10本の腕の中に隠れていてよくわかりません。でも砂をどこかに持っているのですから器用なものです。
砂がない環境で飼育すると、砂がついてない白い卵のうを産みますが、そうした卵も正常に発生します。砂をまぶすことは、卵を隠す意味が大きいのでしょう。
水温によっても違いますが、孵化までは50~80日程度かかるので、もうしばらくは卵のうを観察することができます。卵のうは孵化が近づくとふくらんで、やや丸い形に変わり、やがて体長1センチメートルにも満たない小さなコウイカが生まれます。うまく育てば、秋には10センチメートルほどに成長します。
写真上:親コウイカ
写真下:卵のう(中に幼体が見られます)
〔葛西臨海水族園飼育展示係 荒井寛〕
(2010年06月25日)
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