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アシカとペンギンたちを西園に移動
 └─上野  2010/04/16

◎カリフォルニアアシカの移動

 上野動物園では2010年4月12日、カリフォルニアアシカ3頭(オスのジョン、メスのチャッピーとカコ)を東園アシカ池から、西園のコビトカバ舎に移しました。新しい施設を作るため、これまでの場所から移動したのです。

 アシカの成獣の捕獲と輸送には不安もありました。ジョンは体重が約 230キログラムもあり、おとなの男性が数人で取りかかっても動かないことがあるようです。また、ふだん穏やかなアシカたちも、窮地に立たされると相手を噛むことがあります。

 アシカに負担のかからない、安全な方法について検討を重ねた結果、ジョンについては通路に誘導し、その先に置いた輸送箱に追い込むことにしました。ところが、魚を持って通路に立った私に対して、ジョンは怖がったようすで、魚も食べずにプールに引き返してしまいます。通路の狭い入口や、入ったことのない空間を嫌っているようです。

 しかし、同じ誘導のしかたを毎日繰り返していると、ジョンは上や横を何度も見て不安そうな顔をしながら、少しずつ近づいてきました。こちらもしゃがんで視線の位置を下げたり、一時的に給餌量を減らしたり、アジではなくサバを見せてみたり、アジを何匹も通路にばらまいてみたり、工夫を重ねました。

 その結果、食欲が恐怖にまさったのでしょう、ジョンもだんだん近づいてきました。また、ジョンはメス2頭の動きをよく見ており、2頭が通路の近くまで来て餌を食べると、安全だと思うのか、ジョンも近くまでやってきます。

 こうして約2週間経ったある日、ジョンは初めて通路内に全身を入れ、そこで魚を食べました。「さすがジョン、やればできる!」。その後、他の人間がいても怖がらないよう、他の職員も加わって移動のための訓練を続けました。

 輸送箱はアクアワールド茨城県大洗水族館からお借りしました。重量は、アシカを入れると 500キログラムにもなります。

 移動当日、ふだんどおりの手順を進め、通路奥まで来たジョンを屈強な飼育スタッフ6人が輸送箱に入れました。メス2頭については、ビニールシートや畳や板などを使って、プールから陸地へ追い込み、輸送箱に移動させました。

 西園のコビトカバ舎に移動後、落ち着いて餌を食べてくれるか心配だったのですが、2日後には3頭とも魚を食べてくれたので、ほっとしました。このプールでは、アシカたちの水中での泳ぎがよく見えます。

 たいへんな作業でしたが、多くのスタッフの協力を得た結果、アシカたちはスイスイと気持ちよさそうに、コビトカバ舎の隣で泳いでいます。

 なお、アシカと同居していたゼニガタアザラシのメイは、残念ながら肺膿瘍で3月12日に死亡しました。プールの外の人間たちや景色を眺めるのが大好きで、最後まで好奇心が旺盛でした。スタッフ一丸となって治療にあたりましたが、救うことができませんでした。

 2009年6月21日に生まれたオスのチャムは、2010年3月15日、アクアワールド茨城県大洗水族館に3月15日に移動。元気に過ごしています。

◎ペンギンの移動

 工事にともない、オウサマペンギンとケープペンギンも東園から西園に移動しました。オウサマペンギンは、水禽舎の近くにある建物の中で、ニシツノメドリといっしょの生活を始めました。

 群れで行動する性質を活かして、オウサマペンギンは6羽を同じ輸送箱で運びました。移動直後は非常に警戒したようすで、全羽が1か所に集まっていました。当初はほとんど餌を食べなかったのですが、数日後、落ち着きを取り戻した後は、食べる量も増えています。今はまだ奥まった場所にいることが多いのですが、環境に慣れれば、プールで泳ぐ姿が見られるはずです。

 ケープペンギンは1羽ずつダンボールに入れ、トラックで西園へ運び、以前からいたケープペンギンと合流させました。移動個体は12羽、西園にいた個体は37羽、合計49羽の大所帯となり、活気にあふれています。

 こうした準備を経て、アシカ・アザラシの新しい施設も、いよいよ工事に入ります。楽しみにお待ちください。

写真上から:
・運搬前の準備段階。ジョンを通路に慣れさせる
・いったん通路に入って、あわてて出てくるジョン
・西園の新展示場
・新展示場での3ショット

〔上野動物園東園飼育展示係 野田瑞穂 / 西園飼育展示係 齋藤圭史〕

(2010年04月16日)



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