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[トキニュース]今年も産卵が始まりました
 └─多摩  2010/03/31

 2007年12月13日、佐渡トキ保護センターから多摩動物公園に2ペア、計4羽のトキが運ばれてきてから、もう2年がたちました。鳥インフルエンザなど感染症の蔓延に備えた緊急避難のため、また、トキの生理学的なことを調べるために飼育を続けています。

 最初に繁殖した一昨年(2008年)は8羽、昨年(2009年)は10羽がかえり、すべてが育ちました。そのうち15羽は佐渡に運ばれ、4羽は野外に放されました。現在、佐渡のトキたちも繁殖シーズンをむかえつつあり、多摩動物公園で育ったトキが野生で繁殖することに期待がよせられています。

 多摩動物公園での飼育も、佐渡での野生復帰も、環境省の保護増殖事業計画に協力するかたちで取り組んでいます。トキがとても神経質な鳥であること、また、将来の野生復帰を見すえ、人に馴れさせすぎないようにするという環境省からの指示により、みなさんにトキをお見せすることはまだできませんが、園内のウォッチングセンターでは、トキのライブ映像を上映中です。ここ「東京ズーネット」でも、トキの情報を今後もお届けします。

◎トキの個体紹介

 多摩動物公園のトキをご紹介しましょう。佐渡からやってきた2ペアは、それぞれ「Gペア」「Kペア」と呼ばれており、佐渡でも同じ組み合わせで繁殖の経験があります。個体名は、Gペアのメスが「げんき」、オスが「じろう」、Kペアのオスが「わたる」です。これら3羽は2001年生まれで、現在3歳です。残るKペアのメスは2003年生まれの7歳で、この1羽だけ愛称がついていなかったため、多摩動物公園では「たまき」と呼ぶことにしました。

 また、昨年(2009年)育った若鳥のうち、3羽(Kペアの娘1羽とGペアの息子2羽)が多摩動物公園に残っています。これら3羽はまだ繁殖はしませんが、いっしょに飼育して、ペア形成行動などを観察しているところです。

◎トキの近況

 現在、おとなの2ペアに例年どおり繁殖シーズンがやってきました。最近の状況をご紹介します。

2010年
1月11日
 Gペア、Kペア、ぞれぞれのオス(じろうとわたる)の首の上部がグレーに変わりはじめました。トキは繁殖期になると、首のあたりから出る分泌物を頭を使って体に塗りつけるため、首から肩にかけて、羽がグレーに変わるのです。続いてメス2羽も色が変わりました。

1月30日
 Gペアのじろうがげんきに小枝を渡しました。繁殖期当初によく見られる求愛行動のようです。その後、Kペアでも枝渡しが見られました。

2月10日
 4羽を捕まえて健康診断をしました。同時に、止まり木に直径50センチほどのザルのような形をした巣台を取り付けました。ペアはこれを土台にして巣作りをします。巣台をつけた止まり木は地上2メートルほどの高さにあります。巣台の下には直径2メートルほどの落ち葉のプールを作りました。卵やひなが下に落ちても、割れたりケガをしたりしないようにするためです。

3月11日
 Kペアが巣作りを開始。

3月12日
 Kペア、たまきの巣にいる時間が長くなってきました。

3月13日
 両ペアのオスがせっせと巣材の小枝を運び、巣作りしていました。

3月20日
 Kペア、Gペアともに交尾を確認。

3月24日
 録画ビデオを確認したところ、Kペアのわたるが、3月21日に卵を巣の下に落としていました。そこで、巣の下にある落ち葉のプールを調べたところ、2個の卵を発見。録画ビデオを詳しく再確認したところ、3月20日と22日にたまきが産んだものと推定されました。
 夕方、モニターを観察していると、たまきが3個目を産んだようなそぶりを見せました。ふたたび卵が落とされるおそれがあったので、卵を取り上げ、擬卵(にせものの卵)と交換しました。たまきはすぐに擬卵を抱いていました。

3月25日
 録画ビデオをチェックし、前日、Gペアのげんきも1個目を産卵していたことがわかりました。Gペアは、とくにオスのじろうが熱心に卵を抱いています。卵を落としそうな気配はありません。しばらく本物の卵を抱かせて、ようすをみることにしました。

写真上から:
 Gペア、わたる(左)とげんき
 Kペア、じろう(左)とたまき
 色づいてきたじろう
 落ち葉のプールで卵さがし
 熱心に抱卵するGペアのじろう

(2010年03月31日)



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