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トウホクノウサギが白くなってきました!
 └─上野  2010/01/29

 上野動物園の小獣館の地下、いちばん奥の広い部屋で、昨年(2009年)の9月8日から、トウホクノウサギ1頭を展示しています。なお、「東北野兎」です。「東北の兎」ではありません!

 この個体は、2009年5月初め、長野県の野沢温泉スキー場近辺で保護されました。生後数日でした。その後、8月26日に上野動物園にやって来たのです。

 現地では人工哺育で育てられましたが、急に人間に対して攻撃的になってしまったそうです。来園当初も、初期の緊張状態がとけると人間に向かって攻撃してくるようになりました。

 人を恐れず攻撃するようになるのは、人工哺育のデメリットの一つです。飼育担当者と飼育動物がある程度の距離(もちろんケースバイケースです)を保つことがお互いの安全のために重要になります。

 しかし、10日ほどで環境にも慣れ、攻撃的なところはなくなり、飼育担当者が近づくと逃げていくようになりました。そして、約2か月で担当者との関係ができあがり、青草やカシの枝を与えるときは、そばにやってくるようになりました(けっしてなついたわけではありません)。

 日本のノウサギのなかまには、トウホクノウサギ、キュウシュウノウサギ、サドノウサギ、オキノウサギの4亜種が知られています。トウホクノウサギは東北地方や本州の日本海側に生息しています。多摩動物公園の園内など、関東地方で見られるのはキュウシュウノウサギです。

 別種であるエゾユキウサギは冬に毛がほぼ真っ白になりますが、ノウサギで毛がすっかり白くなるのはトウホクノウサギとサドノウサギだけです。東北北部など高緯度の地域、また、冬の気温が低い地域や降雪量が多い地域の方が、白くなる割合が大きいようです。

 今回の個体は、来園時、すでに後ろ足の先の方が白くなり始めていました。小獣館の地下では、東京地方の日長時間に合わせて照明をコントロールしています。また、冬の間は暖房が入っていますが、気温は徐々に下がります。

 小獣館の個体は冬が深まるにつれて毛の白い部分が広がり、今では後ろ足の大部分と腹の毛がほぼ白くなり、前足から胸のあたりがかなり白くなりました。

 日本の自然のサイクルを身近に感じられます。ぜひ、見に来てください!

写真上から:
 2009年09月07日
 2009年12月14日
 2010年01月12日
 2010年01月25日

〔上野動物園西園飼育展示係 井上智右〕

◎東京ズーネットBBの動画から

 トウホクノウサギ(2004年12月、多摩動物公園で撮影)

(2010年01月29日)



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