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ケープペンギン卵の移動
 └─上野  2009/10/30

 今年(2009年)も上野動物園西園のケープペンギンはが9月から繁殖シーズンに入りました。今年は、新たなペアを含め、計6ペアが産卵しています。

 ケープペンギンは1回に2個の卵を産みます。産卵後約10日で巣から取り出し、有精卵は巣に戻します。今回も同様に検卵しましたが、5ペアが産んだ計10卵は、すべてが有精卵でした。ここ最近、有精卵の割合がこれほど高かったことはありません。これはとてもうれしいことですが、ちょっと困ったことでもあります。

 通常、1つの巣で2羽孵化しても、強い方のひなが親の餌を独占してしまいます。その結果、弱い方のひなは餌をもらえず、たいていの場合、死んでしまいます。これは野生でも同じで、餌の量や親による世話などの条件がよほど整わないと、2羽とも育つことはないといわれています。つまり、2卵を親に戻しても、両方育つ可能性は低いのです。

 そこで、国内のケープペンギン飼育の調整をしている担当者に相談をしました。この担当者は、国内のケープペンギン飼育施設、飼育個体数、血統登録などを管理しており、繁殖計画などもつくる、ケープペンギンすべてにおける窓口です。

 卵の引き取り手を探してもらったところ、サンシャイン国際水族館に2卵、八景島シーパラダイスに2卵を渡すことになりました。4ペアから採卵した4卵です。

 発生の進んだ卵の方が温度変化や振動に強く、運ぶときも安全なので、4卵は輸送直前まで孵卵器で温め、2009年10月22日に引き渡しました。

 残った有精卵はそれぞれ親に戻しましたが、10月21日に1羽、10月25日に2羽、10月28日に1羽が孵化。親は現在子育て奮闘中です。

 同じペアから生まれた2卵のうち、1卵は親元に残り、1卵は別の地へ。きょうだいがそれぞれ違う環境で育つことになりますが、どんな場所でもすくすくと、元気に育ってほしいと願っています。

写真上:今年(2009年)の卵
写真下:ケープペンギンのひな(2007年)

〔上野動物園西園飼育展示係 坂下涼子〕

・東京ズーネットBBの動画
  「ケープペンギンに個体識別マーキング」(2004年06月撮影)
  「ケープペンギン」(2005年03月撮影)

(2009年10月30日)



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