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ゴリラの「モモコ」の妊娠経過
 └─上野  2009/09/25

 こちらのニュースでお知らせしたとおり、上野動物園のゴリラのモモコが、9年ぶりに妊娠しました。ゴリラの少なくなった日本の動物園で、出産経験のある若い個体は現在モモコだけ。2009年2月の交尾の結果と思われますので、妊娠期間(約260日)から計算すると、10月中旬から11月上旬に出産予定です。

 2000年のモモコ妊娠時に同居していた個体のうち、今回も同居しているのはトト(メス)だけ。前回、父親ビジュはモモコの妊娠判明前に死亡しましたが、今回、父親ハオコは健在です。ハオコが頼もしいシルバーバックになるのか、2頭のメス(トトとナナ)は初めて見る赤ちゃんにどういう態度をとるのか、興味がつきません。初めて子どもをもつハオコがいたずらしたりしないか、他のメスがかまいすぎたりしないか、心配もしています。

 前回の飼育日誌は大いに参考になります。たとえば、つわりが始まると食欲が減り、よく食べていた野菜を残し、オレンジやみかん、グレープフルーツを好んで食べるようになったと記録されています。また、この時期は横になって寝てばかりの日が続いていたことがわかります。今回も、つわりが始まると明らかに食欲がなくなりました。今年の飼育日誌から一部をご紹介しましょう。

◎2009年4月5日──食欲減退。昨夕のエサ:青菜系の野菜はほとんど残す。トマト、ナス、白菜を残し、青草も残す。食べたもの:甘夏1ヶ、リンゴ少し、バナナ1本、きゅうり(好物)5本、キーウィ2個だけ

 2009年4月に入って1日だけの記述ですが、この食欲不振が1か月あまり続きました。ゴリラには基本的に糖質の入ったフルーツなどは与えていませんが、モモコにだけは口あたりのいいものを与え、カルシウムが不足しないようスキムミルク(500cc) も追加しました。前回の記録を参考に、つわりが終わるのは5月連休明けと予想しました。ふたたび今年の飼育日誌を引用します。

◎2009年5月6日──昨夕のエサ:青菜や野菜をけっこう食べていた

◎2009年5月18日──最近口にしなかったハクサイとレタスを急に食べ始めた

◎2009年5月20日──11時、14時のエサ時間、モモコは起きてきて甘夏、ナス、ペレット、落花生など拾って食べる。今夕のエサ:ハクサイ、キャベツ半分を食す。食べムラはあるが「つわり」は抜けつつある

 7~8月は平年なみの暑さでしたが、日照時間は短く、屋外放飼場は酷暑ではなかったようでした。朝夕の散水は温度を下げるのに効果がありました。

 9月中旬、モモコは安定期に入っています。毎朝、放飼直後に青草をほおばっていますが、よく残すニンジン、小松菜、キャベツなどはおいしくないのかもしれません。

 妊娠約7か月齢の今、心配が一つあります。父親ハオコは、不安や不満、驚きなどが積み重なると、攻撃的になることがあります。興奮すると、モモコを含むメスたちを押し倒したり、背中を甘がみしたりするのですが、勝気なモモコは激しく反撃します。「そんなに走ったら、お腹の子に悪いよ!」。モモコも用心し、三方が囲まれた擬木の下で休んでいる姿がよく見られます。

写真上:寝ているモモコ
写真中:食事中のモモコ
写真下:トトとナナと同居中

〔上野動物園東園飼育展示係 今西亮〕

(2009年09月25日)



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