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ウォークインバードケージ、そこは……その1
 └─多摩  2009/09/25

 昨年(2008年)5月1日に多摩動物公園でオープンしたウォークインバードケージは2つの大きなドーム型ケージから成り立っています。スイギュウ舎側の「西ケージ」では、ツル類やコウノトリ、ナベコウといったアジアにいる大型の鳥を飼育展示しています。今回は、この西ケージでのお話です。

 バードケージは人間が中に入れるようになっています。しかしツルやコウノトリは、繁殖期を迎えてペアになるとなわばり意識が高まり、来園者を攻撃する可能性があります。そこで、コウノトリはオスだけ、ナベコウはメスだけにしました。ツル類についても、タンチョウ、マナヅル、ソデグロヅルはメスだけ、クロヅルはオスだけにしました。

 ところが、繁殖シーズンを迎えた2009年4月、一つの心配が現実のものとなってしまいました。じつは、ツル類はまれにメスどうしでペアを作ってしまうのですが、西ケージにいたタンチョウの姉妹がペアになってしまったのです。産卵が見られた後、1羽が何かに驚いてくちばしを折るという事故が起きたため、卵を取り上げ、けがをした1羽は治療して別の場所に移しました。

 これでペアも解消となり一安心と思っていたら、残っていたもう1羽が、オス1羽で飼っていたクロヅルとペアになってしまいました。この2羽は他の個体とは距離を置きながら行動していたため、ようすを見ることにしました。

 繁殖シーズンも終盤を迎える6月、大阪市天王寺動物園から来たオオヅルを西ケージに入れることになりました。オオヅルはツル類としては最大の種類です。来園した個体は昨年生まれであどけなさが残っていましたが、大きさは成鳥と変わりません。西ケージに放すと、新しい環境にとまどいながらも、最初は落ち着いたようすでした。ところが、しばらくするとタンチョウとクロヅルのペアにしつこく追われるようになり、植え込みの中に隠れて動けなくなってしまいました。一晩ようすを見ましたが、状況は変わりません。

 そこで、クロヅルをバードケージ内の隔離ケージに移動。しかし、残されたタンチョウがオオヅルをしつこく追い回すので、こちらはソデグロヅル舎に移しました。オオヅルもやっと落ち着いたらしく、その日の夕方には、逃げこんでいた藪の中から出てくるようになりました。

 その後しばらく大きなトラブルはなかったのですが、7月下旬、落ち着きを取り戻したオオヅルが他の鳥を追い回すようになってしまいました。まずコウノトリ、その後はソデグロヅル、ナベコウ、さらにオシドリまで……。追いかけられた鳥が観覧通路の方に逃げてくることがあります。事故につながってはいませんが、ドキドキしながら飼育する毎日です。

 ケージ内に入って鳥を間近で見られるウォークインバードケージ。そこは、飼育係の思惑通りにいかない「鳥たちの楽園」です。これからも鳥たちを相手に頭を悩ませる日々が続きそうです。

写真上:ツルの中でも最大種のクロヅル
写真下:あどけないけど“困ったちゃん”のオオヅル

〔多摩動物公園南園飼育展示係 土屋泉〕

(2009年09月25日)



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