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ヤクシカの赤ちゃん成長中!
 └─多摩  2009/07/17

 多摩動物公園では、今年(2009年)もヤクシカが誕生しました。5月25日と6月1日にオスが1頭ずつ、6月14日にはメスが1頭生まれました。3頭とも順調に育っています。

 シカの赤ちゃんは生まれてすぐ歩けるのですが、誕生後しばらくのあいだはほとんど動かず、木の根元などで丸まって隠れています。動くのは母乳を飲むときぐらいです。じっとしていることで外敵から身を守っているのです。

  隠れ方がとても上手なので、飼育係でさえ、赤ちゃんをなかなか見つけられないことがあります。あまりにもじっとして動かないため、私たちも赤ちゃんの存在を忘れてしまい、掃除中にうっかりホウキで叩いてしまったことさえありました。

 生まれて間もない赤ちゃんは、そっと近づきさえすれば捕まえることもできるのですが、最近はとてもすばしっこくなりました。じっとしていても、人が近づくとパッと立ち上がり、あっという間に走って逃げてしまいます。

 赤ちゃんは、生まれてしばらくは母乳だけで育ちます。当初、人の目があると母親はあまり授乳をしなかったのですが、徐々に警戒心がうすれてきたのか、人が見ていても堂々と授乳をするようになりました。

 ある日のことです。最初に生まれた赤ちゃんがお乳を飲んでいたのですが、授乳していたのは母親ではなく、この赤ちゃんが生まれて数日後に出産したメスでした。じつは、このメスの子どもはすぐ死んでしまったのです。子を失ったこのメスは、今年最初に生まれた、自分の子ではない赤ちゃんの体をなめたりして世話をしていました。もしかすると、ずっと授乳していたのかもしれません。この赤ちゃんは、母親の乳を飲み、たいてい母親といっしょにいるのですが、このメスのことも慕っているようで、あとをついて歩く姿もよく見られます。

 このとき、他にもおもしろい行動が見られました。今年3歳のメスが、赤ちゃんといっしょになって母乳を飲んでいたのです。3歳というと、年長のシカと変わらない大きさで、出産も見られる年齢です。この行動の理由はわかりませんが、母親もいやがっており、数回しか見られませんでした。大きな頭を突っ込まれては、母親もさぞ迷惑だったことでしょう。

 赤ちゃんたちはあっという間に大きくなり、草を口にするようになりました。餌の時間には、おとなたちの足もとで草を食べています。とはいっても、食べる草の量はまだ少しです。おとなたちが餌を食べているあいだ、子どもたちがいっしょに行動する姿も見られます。今がかわいい盛りのヤクシカの赤ちゃんたち。多摩動物公園にぜひ会いに来てください。

写真上から:
誕生直後の赤ちゃん(2009年06月01日撮影)
木の根元で丸くなる赤ちゃん(2009年06月25日撮影)
おとなたちの足元で草を食べる赤ちゃん(2009年07月13日撮影)

・ニュース「ヤクシカの秋の顔」(2007年09月21日)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 櫻井佑子〕

(2009年07月17日)



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