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ワレカラってなに?
 └─葛西  2009/07/03

 「ワレカラ」と聞いても、知らない方には何のことか想像もつかないと思います。ワレカラは、海の中で海藻や海草などの上でくらしている小さな「虫」。分類上は甲殻類端脚目に属します。甲殻類であるエビやカニの親戚です。

 現在、葛西臨海水族園で展示しているのは「オオワレカラ」。ワレカラはたくさんの種類が知られていますが、大きくなっても体長1~2センチがふつうなのに、この種類は最大で6センチにもなります。そのため「オオ」ワレカラと名づけられました。体は細長く、陸でくらす昆虫のナナフシにちょっと似ています。

 展示している場所は、葛西臨海水族園「東京の海」エリアの2階中央付近にある「アマモ場の小さな生き物たち」小水槽です。水槽の前に立って、この隠れ上手な生き物を探してみましょう。体の後半にある「歩脚」とよばれる脚でしっかりアマモの葉にしがみつき、体の前方の「顎脚」でぴったり葉にくっついているので、動かずじっとしていると、どこにいるのかほとんどわかりません。

 でも、食事のときはすぐに居場所がわかってしまいます。オキアミなど細かくつぶしてミンチにしたえさをほんの少し与えると、においを感じるのか、水槽中のオオワレカラがいっせいに動き始めます。歩脚は葉をつかんだまま、体の全体を前後に大きく振り、大きな顎脚を両腕のように開いて食物をつかもうとします。移動するときは、行く先を顎脚でつかみ、体をシャクトリムシのように動かします。

 オオワレカラのメスの腹部には「育児嚢」があります。育児嚢の中で孵化した子どもたちは、しばらくは母親にしがみついてくらします。

 昔の日本人にとって、ワレカラのなかまは身近な生き物だったらしく、和歌にもよく詠まれています。これは、アマモなどの海草が食塩をつくるための藻塩草として日本中で日常的に使われていたため、海草といっしょにワレカラも火に焼かれ、その体の殻がはじけるのを目にしていたためでしょう。

 こうして「殻が割れる」ことから「割れ殻」(ワレカラ)と呼ばれ、それと同時に、「我から」(=自分から)という言葉との掛け詞(かけことば)になるため、和歌などによく使われたようです。

 恋ひわびぬ 海人の刈る藻に 宿るてふ

   われから身をも 砕きつるかな   (伊勢物語)

・過去のニュース「“われから”ワレカラを見てみよう!

〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕

(2009年07月03日)



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