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チンパンジー放飼場の「カルガモ事件」
 └─多摩  2009/06/26

 多摩動物公園チンパンジー放飼場は観覧スペース側が水堀で囲まれており、水堀には以前から野生のカルガモがくらしています。今年もカルガモ繁殖の時期を迎え、母親のあとを泳ぐ3羽のひなを確認しましたが、梅雨のうっとうしい季節、そんなカルガモに「事件」が起こりました。

 2009年6月18日朝、開園前に「空き缶回収機」の利用実験をしているときのことでした(空き缶回収機についてはこちらのニュースをごらんください)。

 この日、推定48歳のメス「ペコ」とその娘である8歳の「モコ」を放飼場に出した後、放飼場内の排水溝の中に、カルガモのひな3羽が楽しそうに並んでいるのに私たちは気づきました。

 そこへチンパンジーたちが近づいてきたため、すぐ逃げ出した3羽は排水溝のすみに追いやられてしまいました。しかし、地上にいたカルガモの母親はひるむようすもなく、ペコの足もとで必死に「ガーガー」と鳴いて抵抗していました。カルガモ親子は、ふだん水堀にいるのですが、この日はたまたま水堀から上陸し、コガモだけが排水溝に入って戻れず、母ガモは陸の上で困っていたと思われます。

 そのとき、ペコがやさしく手を差しのべ、ひなを排水溝からすくいあげたのです。私も今まで動物園でゴリラやオランウータンなどの類人猿が鳥をやさしく触ったり、すくいあげたりする光景を何度も目にしてきましたが、チンパンジーが力を加減しながら鳥を助ける行動に初めて遭遇し、びっくりしました。それも、ふだんすぐ「手を出す」ペコが助けたのです。

 この日、放飼場には16頭を出すことになっていましたが、ただちに予定を変更し、ペコとモコ親子を屋内に移動させました。しかし、まだ推定27歳のメス「サザエ」と7歳のメス「ミル」が放飼場に残っています。カルガモのひなも1羽はペコがすくいあげましたが、排水溝にはまだ2羽がいるままです。

 そこで、木岡職員が網を持って中に入り、1羽を救出! しかし、最後の1羽は排水溝の奥の手の届かないところに隠れてしまい、救出できなくなってしまいました。結局、2羽は母親のもとに帰り、1羽は助けられずじまい。その後、チンパンジーたちは何ごともなかったかのように過ごしていました。開園前のおどろくべきハプニングでした。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 黒鳥英俊〕

(2009年06月26日)



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