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ベニイロフラミンゴの独り立ち
 └─上野  2009/04/25

 人の手で育てられたベニイロフラミンゴ(愛称「2号」)が、2009年3月12日、やっと自分で餌を食べるようになりました。孵化後200日、長い道のりでした。

 2008年、14年ぶりにベニイロフラミンゴに産卵が見られましたが、卵が巣から落ちたり、卵の中でひなが死んでしまったり、孵化に失敗したり……。無事孵化しても親鳥がうまく育てることができず、結局、2羽のひなが人の手で育てられることになりました。これを「人工育雛」(じんこういくすう)といいます。

 1号(2008年8月6日孵化)はおとなしくてマイペース。2号(同年8月24日孵化)やんちゃで暴れんぼう。注射器(鋭い針はありません)を使って口の中に餌を垂らして与えます。日光浴や運動もさせながら育てていましたが、残念ながら2008年12月18日、1号は死んでしまいました。

 2号はぐんぐん育ちましたが、次の問題は自分で採食できるかどうかです。最初は自分で水も飲まなかった2号は、ずっと人間から餌を口の中に入れてもらって育ってきたため、自分で採食することがなかなかできません。

 そこで、四つの作戦を実施しました。作戦1:餌は1日5回、均等な量を与えていましたが、餌の量を毎回変え、空腹になる時間帯を増やす→失敗でした。作戦2:給餌回数を3回、そして2回と減らす→これも失敗。少量でも人間が餌を与えているうちは、自分で採食しようとしませんでした。

 作戦3:メス成鳥2羽を「教育係」として同居させる。作戦4:人間から餌を与えないようにする。ただし、作戦1と2で体重が減っていたため、餌を増やし、約20日かけて体重が約2キロまで増えた段階で直接給餌をやめました。人を見ると駆け寄って来てビービー鳴く2号を無視するのは心が痛みましたが、そのかいあって、3日目には自分で水を飲むようになり、6日目にはオキアミを口にし、14日目にはついにペレットを食べるようになりました。2号が自分で餌を食べるところを見たときは力が抜け、そのようすをしばらく眺めていました。

 最近は、他の成鳥と同様、人間から逃げるようになりました。完全な独り立ちまでもう少しです。現在、フラミンゴ舎前に人工育雛の近況をお知らせするパネルを展示してあります。ぜひ、2号の成長をごらんください。

・東京ズーネットBBの動画「ベニイロフラミンゴ誕生」(2008年10月撮影)

〔上野動物園西園飼育展示係 高津磨子〕

(2009年04月25日)



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