ニュース
ミヤコタナゴの繁殖がはじまりました!
 └─井の頭 2009/04/25

 「都」(みやこ)の名のとおり、ミヤコタナゴは東京都(旧・東京市)をはじめ、関東平野部に広く分布していましたが、現在では千葉県と埼玉県、栃木県のごく限られた場所で生息が確認されているだけで、絶滅が危ぶまれる稀少な魚です。東京ではすでに絶滅してしまったといわれています。

 繁殖期は春から夏。生きた貝の殻の中に産卵する変わった習性をもっています。井の頭自然文化園の水生物館では、貝を展示水槽内に入れて産卵させています。水槽では、ひれの色が鮮やかなオスと地味な色合いのメスが貝のまわりで泳いでいるところを観察できます。

 オスとメスのちがいは体の色だけではありません。産卵の準備が整ったメスのお尻の産卵管が伸びてきます。これは、貝の中に卵を産むための重要な器官です。オスは貝のまわりで盛んにメスを誘い、誘われたメスは貝の中に産卵します。産卵は一瞬で終わりますが、運がよければその瞬間を目撃できるかもしれません。

 貝は定期的に交換し、裏側の予備水槽に移します。3~4週間ほどで貝から稚魚が出てきます。じつは、産卵に使われる淡水産の二枚貝も、数が減っていて絶滅が危ぶまれています。そこで、タナゴの繁殖期が終わったら、使った二枚貝は元の生息地に戻しています。

 タナゴのなかまは寿命がとても短く、長くても2~3年といわれています。今年生まれたミヤコタナゴの稚魚は、来年には繁殖に加わります。水槽でみなさんに見ていただくだけでなく、稀少な生物が絶えてしまわないよう繁殖させていくことも、動物園の重要な役割です。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 中村浩司〕

(2009年04月25日)



ページトップへ