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生態園に現われたセミの正体は……イワサキクサゼミ
 └─多摩  2009/04/17

 2009年4月6日朝、チョウの担当者に呼ばれて昆虫生態園に行ってみると、セミのような鳴き声がします。聞き慣れない鳴き声に職員があちこち探すのですが発見できません。春だからハルゼミでしょうか? いえ、ハルゼミは「マツゼミ」とも呼ばれ、松に集まるセミ。しかし、生態園に松はありません。

 多摩動物公園で聞いたことのない鳴き声に、外国のセミだろうかという職員まで現われました。捜索中、「アメリカデイゴの葉にいたぞ!」という声があり、あわてて捕虫網を持って駆けつけましたが、逃げられてしまいました。

 昼休み、職員が苦労して撮影に成功。その写真4枚を見ると、高いところの葉にとまっているところを下から写しているので逆光となり、斑紋がよく見えません。翅の先が丸く、うすい黄色の模様があるように見えました。

 図鑑で調べても該当種がありません。だれかが外国から持ち込んで放したのでは?という疑念さえ湧いてくる始末です。しかし午後2時、やっと捕まってくれたセミの正体は、日本最小のセミ、イワサキクサゼミでした。

 イワサキクサゼミは体長約13~16ミリ。八重山諸島、宮古島、久米島、久高島、沖縄本島南部のみに生息し、4~7月に羽化。最盛期には騒がしく「ジィー、ジィ」と耳をつんざくほどの声で鳴きます。成虫はサトウキビの葉、幼虫はサトウキビの根から吸汁する「害虫」です。ススキやチガヤなどのイネ科植物にもつくのですが、生態園内にそうした植物はありません。

 まだ成虫が少ない4月上旬だというのに、沖縄で採集して東京の昆虫園まで持ち込むという可能性もあまり考えられません。とにもかくにも、沖縄で鳴き声を聞いた職員がいたにもかかわらず、その正体に頭を悩ませた一日でした。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 三枝博幸〕

(2009年04月17日)



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