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ムフロン出産を目撃、3頭とも安産でした
 └─多摩  2009/03/27

 3~4月はムフロンの出産の季節。でも昨年と一昨年、トモコとサトミは難産でした。赤ちゃんを人が引っぱり出したのです(昨年の出産ニュース)。

 2009年3月5日昼過ぎ、トモコが座りこみ、お尻から粘液を出しています。すぐ別室に隔離。観察を続けながらムフロン舎を掃除、そしてサル山の掃除をしていると、16時30分すぎ、「ムフロンが産まれている!!」との連絡が。

 駆けつけると、体の濡れた子がよろよろしています。他の個体は遠巻きに眺めるだけ。見ると、陽菜のお尻が汚れています。「初産で何が起きたかわかっていないな」と考え、陽菜を室内に隔離。それから子を同居させましたが、母親は赤ちゃんに近寄ろうとしません。赤ちゃんもなぜか、こちらに来る始末。

 赤ちゃんが乳首をくわえるようしむけましたが、吸いません。出産後数日間出る「初乳」には、成長に必要な物質が含まれています。そこで、獣医師が注射筒で初乳を搾り取り、子に飲ませました。約30ミリリットルです。これで親心が芽生えてほしいのですが……。20時頃見に行くと、まだ落ち着いていないようすです。隣室のトモコも出産の気配はなく、のんびりと反芻していました。

 来園者の方が、陽菜出産のようすを撮影してくださっていました。飼育係は出産時にカメラを持っていることは少なく、また撮影どころではないことが多いので、貴重な写真です。お聞きしたところ、陽菜は自分の出産に自分でおどろき、すぐ子から離れ、そのときにへその緒も切れたそうです。また、他のムフロンも、その光景におどろいてしまったようです。撮影者のご好意でお借りした写真は、右の上の4枚組です(撮影は下郡慎太郎さん)。

 翌朝は親子なかよく寄りそっていました。トモコの部屋にも小さいのが1頭増えています。難産続きだったトモコですが、安産だったようです。赤ちゃんは2頭ともオス。3月6日朝、陽菜の子が2.1キログラム、トモコの子が1.9キログラム。やや小さめですが、徐々に体重も増え、順調に成長しています。

 3月13日には、数日前から隔離していたサトミもメスを出産。昼過ぎに掃除に入ったところ、すでに産まれており、元気一杯でした。体重3.3キログラム。

 3月23日、いっせいに群れに戻したところ、子どもたちは群れの中で親にはぐれないよう、必死についてまわっています。小さく、愛らしいすがたも今のうち。オスは角がどんどん成長していきます。

〔写真〕
上段4枚組:陽菜出産のようす(撮影:下郡慎太郎さん)
中段4枚組:耳標をつけた赤ちゃんたち
      陽菜の子=イオ(オス)、トモコの子=ダノ(オス)
      サトミの子=ソノ(メス)
写真下  :群れでのようす(2009年3月23日)

〔多摩動物公園南園飼育展示係 大橋直哉〕

(2009年03月27日)



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