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アズマヒキガエル、産卵まで
 └─井の頭 2009/02/20

 季節はずれにあたかかった今週の日曜日(2009年2月15日)の夕方、閉園後の園内を歩いていると何やら変な声が。「コッコッコッ」、「クックッ」とかすかに聞こえるその声は、鳥が鳴いているように思えました。

 しかし、耳をすますと、いろいろな方角から聞こえるのです。薄暗い中、声の主をさがすと……地面の上にうずくまる茶色い物体を発見! アズマヒキガエルでした。

 その後の探索により、熱帯鳥温室の前に作られた池の周囲に、10匹ほどのアズマヒキガエルを見つけました。どのカエルも近づいても逃げず、そっとつついててみても。かなりにぶい反応でした。

 暗くてよく見えませんでしたが、池の中からも声が聞こえます。繁殖のために、産卵場所である池に、オスたちが集まってきていたのです。

  翌々日(2月17日)は一転して冬に逆戻り。朝、池の中をのぞくと、たくさんのアズマヒキガエルのすがたが……。メスをしっかと抱いたオスも見られましたが(写真上)が、ほとんどはひとりぼっちのオスのようです。池の底をくまなく探しましたが、まだ産卵はしていないようでした。

  翌日ものぞきにいきましたが、卵塊は見つからず……。この日もとびきり寒い日で、水が冷たいのか、池の底に体をのばしてじっとしていたり、泳いでいてもまるでスローモーションのようです(写真中)。

 アズマヒキガエルは、温度と湿度の高い夜、土の中や落ち葉の下からすがたを現し、繁殖池に向かうといいます。過去にもほとんど例がないほどの気温の落差はカエルにもきびしいのでは──と、その身が案じられました。

 そして2月19日のことです。朝、池をのぞくと、まず単独のオスたちが目につきましたが、抱接しているペアも2、3組見つかりました。そして、一つのペアの体から、長い透明のひも状の卵塊がジュルジュルとのびています(写真下)。

 ついに産卵が始まっていたのです! なんだかとてもうれしくなりました。池の底は、やがてひも状の卵塊でいっぱいになるでしょう。そして来週には、卵から孵化した小さなオタマジャクシたちを観察できるはずです。しばらくは池をのぞくのが楽しみな日が続きそうです。

〔井の頭自然文化園教育普及係 天野未知〕

(2009年02月20日)



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