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チョウの体色、茶色と黄色のせめぎ合い
 └─多摩  2009/02/06

 昨年(2008年)11月から12月にかけて、多摩動物公園の昆虫生態園では 650匹以上のカバタテハを大温室に放しました。茶色をしたこのチョウは日光浴が大好きで、木や草の葉、壁や通路など、人目につきやすい場所で翅を広げて体を温めています。

 ところが、チョウはみんなきれいなもの、という先入観からか、カバタテハを見た方から、「うわっ、ガだ!」「きもちわるい、なんでこんなのがいるの」といった声が聞かれます。がんばってたくさん育てたものの、評判はかんばしくありません。

 少し数を減らそうか……と弱気になってしまいすが、チョウ班の仕事の成果は、昆虫生態園で放した数を無視できません。苦労して幼虫を育てても、羽化させられず、大温室に放すことができなかったら、仕事をしていないように思われてしまいます。まわりの職員の「どんどん飛ばそうよ!」という声もあり、昆虫生態園の中は茶色だらけになりました。

 しかし、黄色のチョウも負けていません。それは、ミナミキチョウとタイワンキチョウです。これらは、2008年11月におこなった石垣島への採集調査の成果です。ただし、生態園内でアリに卵を盗られてしまったり、幼虫がアシナガバチに食べられてしまったりして、温室内ではわずかにしか飛んでいませんでした。

 しかし、年末には天敵が減ったようで、この1か月で数が増え、 900匹余りの羽化が見られました。これら黄色いチョウは花を好んで訪れます。ナガボソウ、メキシコハナヤマギ、ランタナなどで花盛りとなった温室内をすばやく飛びかい、全体を黄色に塗りつぶしていきました。茶色いカバタテハがたくさんいるにもかかわらず、目立つ飛び方とその数で、温室内は黄色が圧倒的になってしまったのです(他のチョウもいますが、当然目立ちません)。

 あまり評判がよくないうえに、「茶色vs黄色抗争」の劣勢に立たされたカバタテハ。担当者は復権を目指して奮闘中です。しかし、このところ、白地の翅に「あみだくじ模様」をもつイシガケチョウが増え、通路や葉の表裏にはりついています。茶色のカバタテハ、黄色のキチョウ2種、白っぽいイシガケチョウ──昆虫生態園の大温室は、色彩三つ巴の様相を呈しています。

写真:アサヒカズラにむらがるキチョウたち

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 チョウ班〕

(2009年02月06日)



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