「布をかぶる」といえば、上野動物園のゴリラ「ピーコ」が有名です。

・ニュース「“ピーコのファッション”をチェック！」
・ビデオ「ゴリラのピーコと風呂敷と」

　でも、多摩動物公園にいるオランウータンも、きれいで新しい布には目がありません。とくに世界的にも有名で長寿な２頭、モリーとジプシーは、Ｔシャツやトレーナーなどをわたすと、ちゃんと手を通してじょうずに着ることもできるのです。

　なにかオランウータンが喜ぶことはないかな？と考えながら、年賀状コーナーを歩いていて「ピン！」とひらめきました。オランウータンにウシ柄の布やＴシャツをプレゼントしたらかぶってくれるはず！　イベントとしてもおもしろいし、来園者の方が写真を撮って年賀状に利用してくださったら宣伝効果大かも！

　──そこでさっそく休日に買出しに出かけました。しかし、近所の生地屋さんにはウシ柄の布はなかなか見あたらず、結局、日暮里（生地の問屋街）まで足を運びました。手に入れたウシ柄の生地は、１メートルはそのままとし、３メートルはオランウータンの太い首でも入る特大Ｔシャツを作ってみました。

　まずは、寝室のジプシーに布を見せ、反応を調べました。結果は上々！　寝ころんでくつろいでいたジプシーは起き上がり、いつもの「ちょうだい！」のポーズをしてくれました。

　そこで、放飼場に出たジプシー、チャッピー、ミンピーにＴシャツをわたしました。Ｔシャツを拾ったジプシーはすぐに頭からかぶったのですが、そこにミンピーが興味津々でやってきました。ジプシーがＴシャツを着ようとしたまさにその瞬間……チャッピーがジプシーからＴシャツを奪い取り、一気に引き裂いてポイッと捨ててしまったのです。

　見ていた来園者のみなさんからも思わず落胆の声があがりました。しかし、それでめげてしまうジプシーではありません。チャッピーが興味を失ったところを見はからって、すかさず布を拾い上げ、頭にかぶって得意顔になていました。その後、ミンピーも布を頭に巻きつけたり投げたり、楽しそうに遊んでいました。

　１メートルの布はユキとキキにプレゼント。２頭は布を取り合ったり、かぶってみたり敷いてみたり。窓ふきが好きなユキは、窓拭きにも利用していました。１枚の布が小さな切れ端になるまで、２頭はあきずに遊んでいました。

〔多摩動物公園南園飼育展示係　清水美香〕

（2008年12月26日）