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不思議な魚、ギマの幼魚を展示しています
 └─葛西  2008/10/17

 葛西臨海水族園では、10年前から目の前の海(人工の「西なぎさ」)で調査用小型地曳網を毎月1回ひき、そこに入る小さな魚たちを調べています。今年(2008年)も8月29日に調査したところ、大量のギマの幼魚が網に入りました。

 過去の記録を調べてみると、毎月の調査を始めた1999年から今年までの10年間のうち、8年でギマの幼魚が網に入っていました。季節は8~9月を中心に、6月から11月までです。

 ギマという魚はとても面白いすがたをしています。来園者の方に見ていただこうと大切に運び、バックヤードで餌づけをしてから、展示を始めました。展示場所は、葛西臨海水族園「東京の海」の2階中央付近、「葛西の海」という小水槽です。これは目の前の海でとれる生物を見ていただけるように設置している水槽です。

 ギマは、飛び出した第1背びれのトゲとともに、腹びれは2本の強いトゲに変形しています(写真)。このため、前から見るとトゲが3本飛び出しているように見えるのです。幼魚でも成魚でも、水中から取り出すと、そのまま置物のように立てて置くことができます。

 成魚は体長25~30センチくらいにもなります。図鑑によると、本州の太平洋側の千葉県以南、四国、九州から南インド、オーストラリアにも分布するとのこと。でも、釣り人以外はあまりお目にかからないのではないでしょうか。伊勢、三河湾、浜名湖では大量にとれ、けっこう美味しい魚だそうです。東京湾では、たまに千葉県の定置網に大量に入るのですが、体から出す粘液と、そのトゲのせいで少々嫌われています。

 葛西で毎年見られるギマの幼魚は、成魚が1~2か月前に産卵し、東京湾で孵化したか、もっと西で孵化して流されてきた個体でしょう。葛西では幼魚しかお目にかかることができません。

 ギマは「おちょぼ口」で、1日に何度も給餌しないとやせてしまい、なかなか大きくならない飼育係泣かせの魚でもあります。葛西臨海水族園にご来園の際は、珍しいギマの幼魚が見られる「葛西の海」水槽にぜひお立ち寄りください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕

(2008年10月17日)



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