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ゲンゴロウ幼虫の展示
 └─多摩  2013/07/26

 多摩動物公園昆虫園本館1階の水生昆虫展示エリアに、ゲンゴロウ幼虫を展示しました。幼虫をケースに入れ、成虫の展示水槽の中に置いてご紹介しています。

 ゲンゴロウは水草の茎の中に産卵します。幼虫は成虫とは形が異なり、細長いムカデのような姿をしています。生まれたばかりの大きさは 2.5センチほどですが、2度脱皮して8センチほどにまで成長します。

 幼虫は餌をたくさん食べ、どんどん成長します。餌は園内で増やしているコオロギやバッタです。幼虫は牙のような大あごで餌に食らいつき、消化液を注入して、中身を溶かして食べてしまいます。

 野外では、蛹になる準備の整った幼虫は水から出て、岸辺の土にもぐりこみ、蛹になります。

 複数の個体を育てなければならない飼育下では、蛹になる準備ができた幼虫を水から取り上げ、「強制上陸」させます。しかし、取り上げるタイミングが早すぎると蛹になりませんし、遅いと死亡してしまいます。蛹化のタイミングは個体ごとに異なるため、餌への反応や体型の変化を観察しつつ、1匹ずつ見きわめます。取り上げた幼虫は、適度に湿らせた土を入れた蛹化専用ケースに移し、うまくタイミングが合っていれば無事土の中にもぐって蛹になります。

 ゲンゴロウの繁殖期は4月末から7月です。産卵の時期が限られていますが、展示生物として人気がある一方、東京都レッドリスト2010では絶滅種、環境省レッドリストでも絶滅危惧II類に指定されるほど生息数が減っており、展示を維持するためにも、また飼育技術開発をすすめるためにも、繁殖に取り組む必要がある生き物です。

 繁殖のためには、上記のとおり、産卵床となる水草、豊富な餌生物、コンクリートなどで覆われていない岸辺の土などが必要になってきます。

 ゲンゴロウを展示している水族館や昆虫館はありますが、幼虫を展示しているところは少ないようです。順調にいけば、幼虫は8月中旬から下旬まで展示の予定です。

写真上:ゲンゴロウの幼虫の頭部
写真下:産卵しようとしている成虫

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 橋本浩史〕

(2013年07月26日)



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