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ツチブタ赤ちゃんの成長
 └─上野  2011/09/02

 上野動物園のツチブタ「アルディ」(オス)と「ヨシコ」(メス)に2011年7月29日赤ちゃんが生まれ、約1か月経ちました。ツチブタの繁殖は上野にとって初めてのことですが、順調に育っています。

 ヨシコの妊娠に気付いたのは出産2週間前のこと。3、4日前から暑くて仰向けで寝ているヨシコのあらわな腹を見ると、いつもより乳首が目立つように感じられました(乳首は後肢の間に2対あります)。
 注意して見ていたところ、ある日乳首の上の方が呼吸とは違う速さで動いたように見えました。見間違いかと思い、手を当てて、そおっとノックすると、「ポコポコッ」と動いたので赤ちゃんがいると確信しました。

 ツチブタは、夜行性なので昼間はずっと寝ており、ふだんは担当者でもほとんど行動観察ができません。そのため交尾は確認できていませんが、来園時にはヨシコより一回り小さかったアルディが、去年ごろから寝ているときにペニスが出て粘液が付いていることがよくあったので、オスとして成熟し繁殖の期待をしていました。

 ツチブタは国内で飼育例が少なく、繁殖の記録も数例しかありません。これまで乳首が目立ってから5日で出産という例があり、ヨシコの出産も間近と考えられたので、すぐにアルディと分け、展示を休ませていただきました。そして夜間の観察ができるように、モニターカメラを設置しました。

 出産の日のヨシコは、朝から眠りが浅く、寝ていても土を掘るような動きをしたり、落ち着きがありませんでしたが、午前11時ころに出産しました。子は開眼していて、耳は垂れていました。体毛はほとんどなく、皮膚の色はうすピンクでシワシワの貧弱な感じでしたが、出生直後からしっかり踏ん張って立つことができ、よろよろしながらも舎内全体を動き回ったり、精力的にヨシコのそばに行こうとして、ヨシコの体によじ登ることもできました。

 一方ヨシコは、子をまったく構いもせず、離れて寝ていました。なかなか授乳しないのでヒヤヒヤしましたが、次の日の朝、力強く「ヂュッヂュッ」と乳を吸う音が確認できたので一安心しました。
 その後、子は必ずヨシコの腹の横にいて、お腹がすいたら起きて自分で乳を探り飲んでいます。ヨシコは熟睡のままですが、ときどき起きて鼻づらで子を移動させたり、子の陰部を舐めたりとよく面倒を見ています。ただツチブタらしい無頓着さで、よく子どもを踏んでいたり、子を枕に寝ていたりするので、こちらはドキッとしますが大丈夫なようです。仔は踏まれると「グニュゥー」というような鳴き声を出しています。

 子の成長は目を見張るものがあり、生後8日目には耳がしっかり立ち、10日を過ぎると毛もうっすら、全体的に生えてきました。すっかりヨシコのミニチュアです。落ち着いたころから体重測定を始め、出生時1100~1400グラムといわれる体重が、現在は6キログラムを超えました。
 母子ともに基本的には寝ていますが、夕方の餌の時間にヨシコが起きたとき、子どもも動きますのでよく見ることができます。

写真上:生後2日目
写真中:授乳風景(生後15日目)
写真下:最近の母子(2011年8月31日撮影)

〔上野動物園西園飼育展示係 多田和美〕

(2011年09月02日)



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