ニュース
ショウジョウトキの繁殖のくふう──飼育担当と共同でひなを育てる
 └─ 2026/02/06
 多摩動物公園の「トキ類飼育舎」では現在、トキ科の鳥9種を含む全11種の鳥を飼育しています。

 今回紹介するショウジョウトキは、南アメリカのベネズエラからブラジル南部にかけての海岸や川岸、湿地などに生息する赤色の羽が特徴的な鳥です。「ショウジョウ」の名は、日本の色名の「猩猩(しょうじょう)緋」のようなあざやかな赤い色に由来するとも言われています。

 多摩動物公園では、これまでショウジョウトキの親鳥が自らひなを育てて多くのひなが巣立ち、順調に自然繁殖してきました。しかし、子育てが得意な個体ばかりが子孫を残してきたため血統に偏りが見られるようになりました。動物園で長期的に個体群を維持するためには、なるべく血統の偏りがないように繁殖を進める必要があります。


ショウジョウトキの幼鳥(左)と成鳥(右)

 そこで、2023年に他園から新たに導入した、血統の異なるオス1羽での繁殖に向けて取り組んできました。

 繁殖に向けた最初の課題は、新たな個体がスムーズにペア形成できるかどうかでした。ショウジョウトキは群れで生活し、オスとメスが協力してひなを育てます。当園の群れは20羽を超える規模ですが、新たに個体を合流させる際、繁殖相手を見つけられるかどうかは大きな心配事です。しかしこの個体はこの課題を難なく乗り越えペアを形成し、2024年の多摩ですごす初めての繁殖期には2羽のひなが誕生しました。

 続いての課題は、この個体が子育てを上手にできるかどうかですが、残念ながらこの年のひなは2羽とも孵化後数日のあいだに死亡しました。原因は、親となったオスは繁殖経験が少なく、ひなの扱いに慣れていなかったため、適切なひなの保温や給餌ができなかった可能性が考えられました。

 本来はこのペアに再挑戦してもらって自然育雛に取り組みたいところですが、ひなを確実に残せる方法を考え、2025年は「併用育雛」(へいよういくすう)による繁殖に取り組みました。

 「併用育雛」とは、親鳥がひなを育てる「自然育雛」と、飼育担当者が親に代わって育てる「人工育雛」の両方を活用した方法です。ひなの体力が安定するまでは人が育て、その後は親鳥に戻してひなを育てます。

 まず親が産卵した卵を回収して偽物の卵と交換し、卵を孵卵器に入れて孵化させます。次に孵化したひなを2~3日間人工育雛したのちに親元の偽物の卵とひなを交換します。

 この方法では経験の浅い親がひなの扱いに慣れる前に、ひなの体力が落ちるのを防ぐことができるだけでなく、ひなと血縁関係がなくても、産卵が同時期であれば、仮親として別のペアに託すこともできます。これにより、特定の個体の子孫を確実に育てることにつながります。


人工育雛中のショウジョウトキのひな

 今回はオス個体の血統のひな4羽を併用育雛し、のべ3ペアの仮親に託しました。具体的には、繁殖経験が豊富な別の2ペアに1羽ずつ託し、残る2羽は本来のオス個体のペアに託しました。

 結果として、併用育雛をおこなったひな4羽すべてが成長し、8月に巣立ちました。2~3日間の人工育雛でひなに体力がつくので、巣に戻ったのちもひなが仮親や本来の親鳥にしつこくえさを要求でき、親がひなをしっかり認識して育雛行動を継続できたのがよかったのではないかと思いました。


無事巣立ったショウジョウトキの幼鳥

 こうして新たなオス個体は2025年度に育雛経験を積むことができましたので、来年度は飼育担当者が介入しない自然繁殖で成功できるよう、取り組んでいきます。

〔野生生物保全センター保全係 仲〕

◎関連記事
外国産トキたちの繁殖(1)ショウジョウトキとムギワラトキとクロツラヘラサギ(2023年09月15日)

(2026年02月06日)


ページトップへ