2025年7月11日に多摩動物公園で生まれた、ボルネオオランウータンの子「キーボー」(オス)について近況をお知らせします。

格子につかまるキーボー(2025年10月29日撮影)
生まれた当初は弱々しいながらも、母親「キキ」のお腹にしっかりとつかまっている姿が印象的でした。あの細い腕や足でよくぞつかまっていられるものだと思いました。
生まれて1か月くらいはキキにしがみついて顔を母親の体に埋めていることが多かったのですが、1か月をすぎるころには、周りを見るようになり、キーボーの顔がよく見えるようになりました。
そのころ、寝室内では、キキがキーボーを室内の柵につかまらせて、しばらくそのままにしているのが見られました。キーボーはまだ移動はできず、必死につかまっています。しばらくして疲れてきたのか、鳴き声をあげると、キキが抱っこしに戻って来ます。
キキ母さん、子育てに疲れたのか? それともキーボーを鍛えているのか? 麻袋の上にうつ伏せでそのままにして置き、キキはえさを食べているという姿もよく見られます。
これまで、当園のオランウータンは兄弟でなかよく育ってきました。キーボーの7歳上のオス「ロキ」は、生まれたころから6歳上のオス「リキ」(現在は福岡市動物園にいます)と、チャッピーの子「ホッピー」も、6歳上のオス「アピ」とともに育ちました。キーボーもロキといっしょにすごしていました。ロキはキーボーを抱き、キーボーもロキにしがみついていました。キキはそれをとがめることもなく、見守っていたため、とくに問題はないと考えていました。
しかし、キーボーの扱いが荒っぽく見受けられる場面がありました。ロキがキーボーにキスをするのですが、そのうちに顔ごと口に入れたり、キキがキーボーを返すよう促しても、キーボーを連れて逃げ回ったりするなど目に余る行動が見られたため、ロキをキキ親子から離すことにしました。分離初日は、キキは落ち着かず、ロキは鳴き叫んでいましたが、数日経つと慣れてきたようです。

ロキとキーボー(2025年10月15日撮影)
その後、キキ親子とメス「チェリア」を放飼場で同居させることにしました。チェリアは人工哺育個体で、ジュリーが仮親となって育ったオランウータンです。オランウータンの出産、子育てを見て学習してもらうため、寝室をキキ親子の隣にして子育てのようすを見せてきました。
今回は、キーボーと直接対面です。同居初日、チェリアはキキ親子と距離をとり、遠目にキーボーを覗き込んでいましたが、手を出すことはありませんでした。その数日後、チェリアがキーボーを抱いているのが見られました。キキもとくに気にしているようすもなく、一度は子を抱かずに寝室へ帰ろうとし、思い出したかのようにキーボーを迎えに行きました。チェリアが将来、母親になれるかもしれないと思えたできごとです。
さまざまなできごとがありますが、キーボーの健やかな成長を願っています。
〔多摩動物公園南園飼育展示第2係 オランウータン担当〕
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