厳しい夏がすぎ、多摩動物公園のサバンナエリアにも秋が訪れました。これまで木陰で暑さをしのいでいたキリンたちも、涼しくなったため放飼場をのびのびと歩き回るようになりました。
とくに好奇心旺盛な若いキリンたちは、同じ放飼場でくらすシロオリックス(以下「オリックス」)のことも気になってきたようです。オリックスたちが放飼場へ出てくる時間になると、えさ場や扉の前へ近づいてくるようになりました。
キリンの中でも、4歳のメス「ヒカリ」が、オリックスたちのあとをついて歩く姿がよく見られます。オリックスのことが好きなのか、それとも自分もなかまだと思っているのかもしれません。

オリックスたちのあとをついて歩くヒカリ(左のキリン)
キリンとオリックスは今年(2025年)6月25日から同じ放飼場でくらしていますが、これまで大きなトラブルはありません。体の大きなキリンたちが群がっていても、オリックスたちはそのあいだをすり抜けてえさ場へ向かうことができます。
ただ、キリンがあまりにしつこいときには、頭のツノをぐっと向けて威嚇する姿も見られます。オリックスがキリンの好奇心をうまく受け流していることが、よい関係を保っている秘訣のひとつのようです。

えさ場で採食するオリックスたちと興味津々なキリンたち
キリンたちがオリックスのえさ場を頻繁に訪れるようになった背景には、秋になって食欲が戻ってきたことがあるのかもしれません。
オリックスのえさ場からキリンの興味を逸らせればと考え、新しい取り組みとして、野生でキリンが好んで食べているアカシアと同じく、マメ科植物である園内に生えているハリエンジュやクズなどをゴンドラのかごに入れて与えてみることにしました。
枝葉の給餌は、これまでもロープで枝を縛って固定する方法でおこなってきましたが、ハリエンジュのようにトゲがある植物や、クズのようなつる性の植物は固定が難しかったため、かごを使うことで、キリンたちが食べやすい高さで与えることができました。実際にキリンたちは夢中になって食べており、クズの場合は、網目の隙間からつるを引き出す過程そのものがよい刺激になっているようです。
またハリエンジュは、枝を短く切ってそのままゴンドラに詰め込んでもキリンたちは舌で器用に葉を巻き取るので、食べ終わるころには枝だけがきれいに残されます。キリンたちに食べてもらうことで、夏のあいだに園内で繁茂したマメ科植物を有効活用することもできました。

ゴンドラからクズを引き出して採食するキリンたち
涼しくなって動物たちがよく歩き回るようになったので、動物たちをより近くで見られるようになりました。担当者が放飼場前で実施している「キーパーズトーク」では、キリンたちが長い舌で葉を巻き取って食べるようすを目の前で見ることができます。ぜひサバンナエリアで、動物どうしの関係性や採食のようすを観察してみてください。
※キリンのキーパーズトーク実施日時については、
多摩動物公園のイベントカレンダーをご確認ください。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 菊池〕
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