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ソデグロヅルの繁殖に向けての取り組み
 └─ 2025/08/08
 多摩動物公園では、ソデグロヅル舎の鳥インフルエンザ対策工事が完了し、2025年3月に園内の隔離施設からソデグロヅル舎へソデグロヅルの引っ越しをおこない、4月から展示を再開しました。(詳細は「ソデグロヅルの展示再開について」参照)


ソデグロヅル

 隔離施設では、屋内で飼育していましたが、ソデグロヅル舎では日光を十分に浴びられるようになりました。えさの量を少しずつ増やしたところ、ソデグロヅルは徐々にふっくらと大きな身体になり羽毛のつやもよくなってきました。

 飼育環境と体格がよくなったことで、すでにつがいを形成している3ペアでの繁殖を期待して、ケージに巣材を入れたところ、5月に産卵が見られました。今回は、初めの産卵を確認してから今までの取り組みについてお伝えします。


工事後の繁殖ケージ(手前が緑ペア、奥が紫ペア)

 産卵が見られたのは「緑ペア」と「紫ペア」の2ペアで、初めの産卵はどちらも5月5日でした。それ以前に2ペアとも交尾が確認できていなかったため、おそらく無精卵だろうと判断してその卵は取り除き、次の産卵に期待しました。これまでの飼育記録によると、ソデグロヅルは通常1回の産卵で1~2卵産みますが、卵を取ると数日後にまた2回目の産卵をするためです。

 しかし、卵を回収しても交尾をするようすが見られなかったため、より確実な繁殖を目指して人工授精をおこなうことにしました。過去の記録から産卵の3~5日前に人工授精をおこなうと有精卵が得られやすいということはわかっているのですが、いつ産卵するかが分からないため、人工授精の最適なタイミングも事前にはわかりません。そこで、できるだけタイミングを逃さないために、卵を取り除いてから3~5日おきに継続的に人工授精をおこないました。


回収した紫ペアの卵

 今回は紫ペアの経過をお伝えします。紫ペアは5月10日に人工授精をおこない、その6日後の5月16日に産卵を確認しました。過去には産卵7日前の人工授精で雛が孵化した例があったため、抱卵を見守ることにしました。

 抱卵期間中、掃除のためにケージの中に入ると、とくにオスは職員に対して嘴や脚で激しく攻撃してきます。その一方で、設置したカメラの録画記録を見ると、熱心に巣材を集めたり交代で卵を温めたりする姿が見られ、ペアで卵を守っている親の一面を知ることができました。孵化予定日の6月14日まで抱卵していましたが、残念ながら孵化にはいたりませんでした。


巣材を集める紫ペアのメス

 ソデグロヅルの繁殖期間は4~6月です。もう一方の緑ペアも孵化にはいたらなかったので、今年度の取り組みはここまでとなりました。今回の人工授精の経験や集めたデータを活かし、来年度の繁殖期も孵化を目指して取り組んでいきます。

〔多摩動物公園飼育展示課南園1係 宮沢〕

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