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山!チョウ!ハブ! 昆虫園の石垣島出張
 └─ 2024/11/27
 2024年10月6日から10日にかけて、多摩動物公園昆虫園の飼育係3名で南西諸島の石垣島へ出張してきました。飼育昆虫の血統を新しくするために採集をおこない、生息環境を知って展示に活かすことが目的です。私にとって、昨年に続き2年連続2度目の南西諸島出張となりました。

 10月になっても石垣島は暑く、海を楽しむためにまだまだ多くの観光客がいました。石垣島に到着した私たちは、海に向かう観光客を横目に山に向かいました。

 昆虫園ではさまざまな南西諸島の昆虫を飼育し、展示しています。たとえばチョウの温室では南西諸島に生息しているさまざまなチョウ類を展示しています。展示種の多くは、飼育している成虫が産んだ卵から成長させて世代を繰り返す累代飼育をおこなっていますが、何世代も飼育していると繁殖や成長がうまくいかなくなることもあります。

 採集数は血統の維持に必要な最低限に抑え、数多く生息する普通種を確認しながら採集し、環境に与える影響がほとんどないように配慮しました。


産卵中のオオゴマダラ

 採集中は基本的に一日山にこもっています。出張中は曇りの日が続き、ときおりゲリラ豪雨のような強い雨が降りました。チョウは明るくなければ飛ばないため、晴れているタイミングを見計らって、要望のあったオオゴマダラなどを採集しました。採集の網を振り回すことに慣れていない私は、一日網を振ったことによってくたくたでした。


網を振っているようす

 夕方には一度ホテルに戻り夕食を食べますが、そのあとゆっくり寝ることができるわけではなく、夜行性のサソリモドキやヤエヤママダラゴキブリの採集のために、また山に向かいます。夜間の採集はライトをもって足元を照らしながら採集をします。街灯などの明かりはほとんどなく、目の前は真っ暗でした。いろいろな方向からフクロウの鳴き声やオオコウモリの羽音などが聞こえてきます。そのような耳慣れない音にビクビクしながら側溝や岩肌などを探し採集をおこないました。

 出張中、人生で初めてハブに遭遇しました。石垣島のハブはサキシマハブという種類で、夜行性で毒をもっています。そのため、採集時だけでなく、採集地点からの移動時も含め、常に注意しながら行動していました。しかし、地面と同化するような体色をしているので、採集に集中していたら気づかなかったのではないかと思います。暗闇の中、ライトで照らしたハブはものすごい存在感がありました。


サキシマハブ

 海に入ることができない石垣島出張ですが、身近にはいない昆虫や植物を見ることができました。また、実際に飼育展示している種の生息地を見てどのような環境にくらしているか確認できたため、今回の出張の経験を飼育や展示に活かしていきます。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 碓田〕

(2024年11月27日)



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