多摩動物公園の北園「ライオン園」で飼育していたライオンのオス「スパーク」(18歳)が2024年4月15日、起立不能となりました。
治療および苦痛の低減を図り、生活の質(QOL)を維持することを飼育担当者と獣医師で検討しましたが、回復が見込めず、治療自体がスパークの身体に大きな負担となること、今後苦痛が増大していく状況にあることから、苦渋の選択ではありましたが、本日4月17日、安楽死処置をおこないましたので報告します。
2024年1月27日撮影
これまでの経過等
2022年5月
スパークは四肢を痛め、また体力も低下してきたことから、同じ群れのオス「ジャンプ」とともに引退させ、バックヤードで静かに過ごせるようにしていました。引退時のスパークは16歳で、ライオンのオスとしては高齢でしたが、動きにぎこちなさは見られるものの、当時は食欲もあり元気にしていました。ジャンプとともに、日中は屋外、夜間は屋内でゆっくりとした時間を過ごしていました。
2024年4月
起立にやや時間がかかるようになり、歩行時にバランスを崩すようなようすがときどき見られるようになりました。
4月13日
やや元気がないようすで、動きが緩慢になり、歩くときにもふらつきが見られました。
4月14日
前日同様、動きが緩慢で、歩行時にふらつきが見られ、呼吸の荒さが目立つようになりました。
4月15日
朝の確認の際、スパークが起立不能となっているのを発見しました。右前肢しか動かすことができず、左前肢と両後肢はほとんど動かせない状態でした。頭を上げることもむずかしいようすで、えさに対する興味を示すことはありませんでした。
4月16日
起立不能の状態に変化はなく、体位を変えることもできない状態が続き、口もとに餌を投げても反応がありませんでした。
4月17日
4月16日と同じ場所にいて同じ状態であり、夜間に移動したようすはありませんでした。
安楽死処置の判断と実施
過去の事例から、起立不能の状態のままでは自分で餌を食べたり水を飲んだりすることができず、体を横たえた際には地面に接する肩や腰に褥瘡(床ずれ)が形成されることが考えられ、この状態を長期化させることは、スパークの苦痛を増大させると予測されました。
猛獣であるライオンと同じ部屋に飼育担当者と獣医師が入ることは事故防止の観点からできないため、体位転換などの必要なケアや、点滴等の治療も麻酔下でおこなう必要がありますが、麻酔薬の投与は状態をさらに悪化させる危険がありました。
以上の理由から、スパークの動物福祉を最優先に考え、2024年4月17日に安楽死処置を実施しました。
2022年5月9日撮影
今後について
安楽死処置を実施後、解剖をおこない、起立不能にいたった原因などを調査中です。原因を究明するとともに今後の対応策を検討し、よりよい飼育環境づくりに活かしてまいります。
このたびは大変残念なお知らせとなりましたが、ご理解いただければ幸いです。
なお、多摩動物公園では、死亡した動物への物品や食品のお供えはご遠慮いただいております。お花につきましては、ご入園のうえ、ご自身で慰霊碑にお供えくださいますようお願いいたします。
(2024年04月17日)