昆虫園の一部では、季節によって展示する種類を入れ替える季節展示をおこなっています。昆虫生態園の出口側(右ウィング)で展示している直翅目(バッタのなかま)もそのうちのひとつで、特に初夏から秋にかけては南西諸島産の種が孵化したり、昆虫園周辺でも採集することができたりと、最盛期となります。
今回ご紹介するのは、宮古島や西表島などの南西諸島に生息する「ヒゲマダライナゴ」です。
その名のとおり、ヒゲ(触角)が白と黒のまだらのイナゴで、体長がオスで4cm、メスだと6cmほどにもなる比較的大型のイナゴです。ヒゲマダライナゴは年に一度だけ成虫が発生する年一化性の昆虫で、夏から秋の間に土の中に卵を産み、卵で越冬します。つまり、成虫の姿をご覧いただけるのはこの時期だけです。
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ススキにとまる成虫 | 写真を撮っていたら担当者の指に飛び乗ってきた。 ヒゲ(触角)のまだら模様がくっきりとわかる |
孵化してから成虫になるまでの期間は2ヶ月ほどで、成虫になってからも1ヶ月程度はその姿を楽しむことができます。しかし、その間に多くのススキをえさとして消費するため、飼育担当者は毎年春から秋ごろまでの出勤日はほぼ毎日、園内のどこかでせっせとススキ採りにいそしんでいます。
生息地ではしばしば、サトウキビやイネ科の植物を集団で食べつくしてしまう問題を引き起こすこともあるようです。日々飼育している中でヒゲマダライナゴの食べるススキの量を見ていると、思わず納得してしまいます。

多くのススキを必要とする
現在、ヒゲマダライナゴは昆虫生態園の出口側で同種よりさらに大型のタイワンツチイナゴ、比較的小型のハネナガイナゴと並んで展示しています。3種がそろってご覧いただけるのは、ヒゲマダライナゴとタイワンツチイナゴの成虫の寿命が尽きるまでの期間限定となります。なお、ハネナガイナゴは通年展示しているほか、昆虫生態園の大温室内でも見ることができます。
ぜひ、それぞれの姿形、大きさや食べているえさを比べてみてください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 髙田〕
(2021年09月03日)