多摩動物公園の昆虫園では毎年「秋の鳴く虫展」を開催しています。その会場で展示する昆虫の一種がクツワムシです。昆虫園では近縁種のタイワンクツワムシは一年を通して展示していますが、クツワムシは鳴く虫展に合わせた季節限定の展示です。

クツワムシ成虫
クツワムシは卵で冬を越し、5月ごろに孵化します。幼虫も成虫もクズなどの葉を食べ、成虫になるまで5回脱皮します。脱皮の際は葉の裏などにとまり、頭を下にして逆さまにぶらさがります。
脱皮は重力を利用するように、最初は頭から出てきます。古い皮から体が抜けても、まだ触角の先は古い皮のなかに残っています。クツワムシの触角は体の長さの2倍以上あるので、体が出た後も触角が抜けきらないのです。
どのように触角を引き出すのかというと、口で触角をはさんで引き出します。口といっても、葉をかみ切るのに使う部分は使いません。クツワムシを含むバッタのなかまは、口に2対の「口ひげ」というものを備えています。
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脱皮中のクツワムシ。触角の先がまだ抜けきっていない | 口ひげで触角を押さえている |
口ひげは感覚器があり、動かすこともできて、触角と同じような役割を持っています。この口ひげで触角をはさんで少しずつ引き出すのです。
触角が抜けきっても、しばらくはぶら下がったままの姿勢でいます。抜けた後でも体はふにゃふにゃの軟らかさなので、固まるまでじっとしていなければならないのです。体が固まった後は起き上がり、脱いだ古い皮を食べ、脱皮の一連の行動は終了です。
昆虫園では秋の鳴く虫展に向けてクツワムシを飼育しているところですが、以上のようにクツワムシのなかまの脱皮は、ぶら下がったり時間がかかったりと大がかりなので、無事に脱皮できるかどうかが飼育のポイントです。
※今年の「秋の鳴く虫展」は2019年9月上旬に始まる予定です。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 石島明美〕
(2019年08月02日)