多摩動物公園のサファリ橋からライオン園(ライオンバスの走る放飼場)の反対側を見おろすと、群れとは別にライオンが「外気浴」をするための運動場があります。おばあちゃんライオンの「プンバ」「サラビ」はここで生活しています。
2頭は1996年7月24日、多摩動物公園で父「ライン」、母「サクラ」の間に同腹姉妹で生まれ、今年でもう20歳になります。人間では成人式の年ですが、ライオンでは大変なご長寿で、20歳を迎えられるライオンはあまり多くはありません。
若い時の2頭は、ライオン園のメンバーとして活躍してくれましたが、年をとり体力が衰えたため、群れから離し、のんびり生活してもらっています。2頭が過ごす運動場はふだんは非公開のため、今はご覧いただく機会がありません。最近のようすをご紹介します。

写真1:運動場へ出て行く2頭
夜間は暖かい寝室で過ごし、日中は運動場へ出ます。陽が差しこむのを待って、運動場への扉を開けると、2頭はすぐに出て行って(写真1)、まずは爪をとぎます。年をとっても爪は伸び続けるので手入れが大切です。とくにサラビは熱心で、毎日爪とぎを欠かしません(写真2)。
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写真2:爪とぎ | 写真3:水を飲む |
爪とぎを終えると水を飲みます(写真3)。部屋の中にも水を飲む場所はありますが、なぜか外へ出るとよく水を飲むのです。一段落すると日向ぼっこ。気持ちよさそうです(写真4)。

写真4:日向ぼっこ(左がサラビ、右がプンバ)
寝室の清掃がすんだら、運動場と寝室の間を出入自由にします。ライオン園の個体は、夕方室内に戻って来てからえさを食べることになりますが、隠居の2頭は、清掃後のきれいになった寝室で昼からえさを食べ、その後は気分しだいで寝室か運動場を自由に選んで過ごします。天気のよい日はほとんどの時間を日向ぼっこをして過ごしています。
若いライオンは一日おきに合計8キロ位のえさを食べますが、2頭はいっぺんにたくさん食べるのは難しいので、その半量を毎日食べさせています。それでもプンバはときどき残すようになりました。2頭とも歯は健在のようで、今のところとくに問題は起きていません。
冬は陽が落ちるとすぐに寒くなります。早めに「帰ってきて」と2頭に何度も声をかけると、あくびをしながらのんびりと、ようやく寝室へ帰ってきます。
でも、ときおりライオン園から挨拶の声が聞こえたり、ライオン園でのいざこざを察したときは、現役時代の活気を取り戻すように、周囲のようすをうかがう姿も見られます。
これからも、できるだけ居心地のよい生活を用意して、長生きしてもらおうと思っています。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 松井由希子〕
(2016年02月12日)