葛西臨海水族園では、さまざまな研究機関との共同研究に取り組んでいます。今回は北海道大学大学院獣医学研究院微生物学教室と取り組んでいる高病原性鳥インフルエンザ(以下鳥インフルエンザ)対策に関する研究についてご紹介します。
鳥インフルエンザは、鳥類に対して高い感染力を持ち、致死率の高い病気です。ヒトに感染する危険性は高くありません。日本では近年、動物園等での発生も確認されており問題となっています。この対策の基本は予防であり、園外から持ち込まないために、搬入車両や靴底の消毒などをおこなっています。しかし、それでも鳥インフルエンザが発生してしまった場合、これまでは感染した鳥類を積極的に治療する手段はありませんでした。
そのような状況のなか、ニワトリにおける先行研究で、ヒトの抗インフルエンザウイルス薬が鳥インフルエンザに効果があり、その安全性も高いことがわかりました。別の種類の鳥でもこの薬の有効性が期待されますが、種によって、薬の吸収率や代謝速度に違いがあるため、ニワトリと同じ用法・用量でも効果が得られるかはわかりません。
そこで昨年度、葛西臨海水族園で飼育しているフンボルトペンギンでこの薬の用法・用量について調べました。薬を入れた魚をフンボルトペンギンに食べさせ、その後間隔を空けて採血し、血液中の薬の濃度を測定しました。これにより、体内で薬がどのくらいの濃度で推移していくのか解析しました。
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| 薬の入ったイワシを食べさせているようす | 足から採血をしているようす |
その結果、フンボルトペンギンもニワトリと同じ用量・用法で鳥インフルエンザに効果があると考えられました。また、副作用は見られなかったことから、フンボルトペンギンに対しても安全に使用できるということもわかりました。
この研究ではフンボルトペンギンだけでなく、様々な種類の鳥に対してインフルエンザを治療できる可能性が示されています。適切な治療が提供できることにより、飼育動物のアニマルウェルフェアの向上にも貢献できると考えられます。

ふだん展示場で過ごしているフンボルトペンギン
今年度はウミガラスやミナミイワトビペンギンで試験を実施する予定です。引き続き、日ごろの感染症対策に万全を期すとともに、治療の可能性を探っていきたいと思います。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 林万里菜〕
(2026年1月2日)