葛西臨海水族園の「東京の海」エリアの「伊豆七島の海3」水槽では、ニシキテッポウエビと共生しているダテハゼを展示しています。ダテハゼはニシキテッポウエビが作った巣穴を使わせてもらうかわりに、周囲を見張って危険が迫るとニシキテッポウエビに伝える、というふうに役割分担をしてくらしています。

ダテハゼとニシキテッポウエビ
ダテハゼがいる水槽では、テッポウエビ類と共生しないとされるハナハゼもいっしょに展示しているのですが、あるとき不思議な光景を目撃しました。なんとハナハゼがニシキテッポウエビの巣穴に入っていったのです。しかもハナハゼが巣穴に入ったことに対して、ダテハゼは無反応。
一見なんともないようなできごとですが、ダテハゼが巣穴の見張り役であること、そしてほかの生きものと共生しないとされるハナハゼの生態を考えると、「ダテハゼが追い払わなかったこと」「ハナハゼが巣穴に入ったこと」が私には不思議に感じられたのです。

ハナハゼ
ニシキテッポウエビと共生し見張り役をするダテハゼは、本来は巣穴に近づく生きものを追い払うはずです。しかし今回はハナハゼに見向きもせず、ハナハゼは簡単に巣穴に入って行きました。しばらく待ってみたのですが、その後ハナハゼが巣穴から出てくるところやほかの生きものが巣穴に入って行くところは見られなかったため、観察からはなぜハナハゼを追い払わなかったのかわかりませんでした。
後日文献などを調べてみたところ、巣穴には出入口がいくつもあることがわかりました。もしかしたら、ハナハゼは気づかないうちにほかの出入口から出ていたのかもしれません。また、ハナハゼは巣穴を逃げ場として一方的に使うことがあるらしいのです。どうやらダテハゼも最初はハナハゼを追い払うのですが、ハナハゼの方が大きかったり何匹かで来たりすると追い払えないようです。しかも、巣穴を使うかわりに見張りをしているダテハゼとは違い、ハナハゼはテッポウエビに何もしてあげません。「居候」するわけです。
観察をきっかけに「ニシキテッポウエビの巣穴には出入口がいくつもあること」「ハナハゼがテッポウエビ類の巣穴を使うこと」を知りました。みなさんもじっくり観察してみると新たな発見につながるかもしれません。ぜひ水族園で生きものを観察してみてください。
〔葛西臨海水族園教育普及係 和泉綾〕
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