葛西臨海水族園の「東京の海」エリアにある「東京湾にもいるこんな生物」水槽を覗くと、小さな白い斑点模様が特徴的なコウイカのなかまが見られます。これは、シリヤケイカという種類のイカで、大きくなると胴長が20cmほどになります。
現在展示しているのは、今年の4~6月に水槽内でアマモに産みつけられた卵を回収し、バックヤードで大事に育てた個体です(
シリヤケイカの卵についてはこちら)。
シリヤケイカの卵は、包んでいる膜(卵嚢)に墨が織り込まれているため、真っ黒になっているのが特徴です。

シリヤケイカの卵。黒い球状の卵をアマモにたくさん産みつけている
1か月ほどで孵化することがわかっているのですが、中のようすがまったく見えないので、どれだけ成長しているのか、いつ生まれてくるのか、とドキドキしながら待ちました。
孵化したばかりのイカたちは、体長1cmほどの大きさしかありません。

孵化直後のシリヤケイカ。1cmほどしかないが、しっかりとイカの姿をしている
小さいころは、イサザアミという長さ1cm程度の小さな甲殻類を与え、成長にともなって徐々にえさを大きくしていきます。活発なときには、自分より大きいえさでも抱えてしまうほど食欲旺盛です。今では1個体で甘エビやキビナゴ、大きい個体では小さめのマアジを丸々1つ食べるほどになりました。
しかし、鮮魚を水面から落とすだけでは食べてくれないこともしばしばあります。えさを棒の先に刺し、触腕にふれさせると抱えることもありますが、警戒して逃げてしまうことも多いので、慎重に根気強くチャレンジする必要があります。

給餌用の棒からマアジを受け取るシリヤケイカ
驚いたときには、体の色が変化したり、墨を吐いてしまったりすることもあるので、そーっと観察してみましょう。
午前、午後にそれぞれ1回ずつ給餌をおこなうので、運がよければえさを与えているところを見られるかもしれません。落ちてくるえさに狙いを定め、素早い動きでえさに掴みかかるようすは圧巻です!
〔葛西臨海水族園飼育展示係 平井蒼大〕
(2025年11月07日)