葛西臨海水族園のガラスドームからエスカレーターを降りると、「サンゴ礁の海」水槽が最初に目に飛び込んできます。こちらの水槽では、鹿児島県から特別な許可を得て採集した、種子島西之表市のサンゴを展示しています。こちらの水槽で育てたサンゴは、2028年オープン予定の新しい水族園において、さらに大きな水槽で展示する予定です。

「世界の海」エリアの「サンゴ礁の海」水槽
「サンゴ礁の海」水槽は、2024年9月にすべての生きものを取り出し、擬岩の修正加工や水流配管を追加し、さらに真水で循環をした後に再び海水で循環をするという、大規模な改修工事をおこないました。そして、ようすを見ながら少しずつ魚の種や数を増やし、現在では17種、約1,000匹もの魚を展示しています。

青色、水色、黄色などカラフルなスズメダイ科の魚たち
このたくさんの美しい魚たち、サンゴ礁の豊かな景観を作り出すためだけでなく、ある大きな目的があって飼育されています。その目的とは、魚とサンゴを同じ水槽で飼育することによって、より自然の状態に近いサンゴのえさを作り出すことです。サンゴには「褐虫藻」(かっちゅうそう)という小さな藻類が共生しており、おもに褐虫藻が光合成をおこなって作り出す栄養を受け取って成長しています。これに加えて、サンゴは小さな動物や、細菌、ただよう有機物を自らの触手で捕まえて食べているのです。
こちらの水槽は生物の飼育を始めてからまだ時間が経っていないため、えさとなる小さな動物や細菌などが十分に住み着いていません。そのため、魚がフンとして有機物を水槽内に撒くことで、サンゴのえさになることを期待しているのです。つまり、タイトルの魚たちのミッションとは、「水槽の中でえさをよく食べ、しっかりフンをすること」なのです。

色だけでなく模様を持つ魚にもご注目
色とりどりの魚たちが泳ぎまわるようすは、みなさんの水族園での楽しい旅の始まりにピッタリです。その魚たちが、豊かなサンゴ礁の展示を作り出すだけでなく、水槽内で重要な役割を担っていることを思い出しながら、近くでじっくりと観察してみてはいかがでしょうか?
〔葛西臨海水族園飼育展示係 廣田神奈〕
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