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陸上にいて大丈夫!?──トビハゼのひみつ
 └─ 2025/09/12
 みなさんは、「水族館の水槽」と聞いて、どのようなものをイメージしますか?

 多くの方は、水の中を魚がゆうゆうと泳いでいる水槽をイメージするのではないでしょうか。しかし、今回紹介するトビハゼは、水がほとんどない泥だらけの水槽にいます。


トビハゼを展示している「東京の海」エリアの「東京湾 泥干潟1」水槽

 トビハゼは、潮が引くと現れる広く平坦な砂泥地、泥干潟でくらす生きもので、多くの魚と違い、水の中にはほとんど入りません。そのため、泥干潟でくらすうえでぴったりな体の特徴がたくさんあります。今回はその中の1つを、先日来園者の方から受けた質問にお答えする形で紹介します。


トビハゼ

 その質問が、タイトルにもある「陸上にいて大丈夫なの?」というものでした。ご存じの方も多いと思いますが、ほとんどの魚は、水を口からえらに通して水に溶け込んだ酸素を取り込む、えら呼吸をしています。では、水中にほとんどいないトビハゼは、どのようにして呼吸しているのでしょうか?

 その答えは、「皮膚呼吸をしている」です。

 トビハゼは、ほかの魚と同じようにえら呼吸もしますが、じつはその割合は高くありません。ある研究によると、トビハゼは陸上にいるとき、じつに7割以上の酸素を皮膚呼吸で取り込んでいるともいわれています。トビハゼの皮膚には、酸素を運ぶための毛細血管が発達しており、空気中の酸素を、皮膚から毛細血管を通じて体全体に行き渡らせることができるようになっています。

 皮膚が乾いていると皮膚呼吸ができないため、トビハゼは、体を湿らせるために干潟をごろんと転がるような行動をします。かわいらしい行動ですが、じつはトビハゼが干潟で生きていくためにはとても大切な行動の一つです。


体の背側を濡らすために腹側を上に向けて転がるトビハゼ

 水族園の水槽でもしばらく観察していると、この行動をする瞬間がありますので、ぜひ観察してみてください。そして、トビハゼについてもっと知りたくなった方はこちらもご覧ください。

 また、現在水族園の親子向けイベントとして、自然の干潟でトビハゼを観察するイベント「トビハゼの調査地を訪ねる」の募集が始まっています(詳しくはこちら)。事前応募制のイベントとなりますので、野生のトビハゼを見たい!という方の応募をお待ちしています!(締切:2025年9月24日(水)送信分まで有効)

〔葛西臨海水族園教育普及係 津山透〕

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