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サンゴタツをじっくり観察してみると……
 └─2025/07/18
 みなさんは、「アマモ場」を知っていますか? アマモ場とは、海草であるアマモが生い茂った場所のことで、沿岸の浅い砂地の海に広がっています。アマモ場は、生きものが外敵から身を守る隠れ場所となるほか、さまざまな生きものの産卵場所としても利用されます。

 葛西臨海水族園の「東京の海」エリアでは、アマモ場を紹介している水槽が2つあります。そのうち、「アマモ場の小さな生き物」水槽は、アマモの葉の上にくらすエビ類など、大きな水槽では観察しづらい小さな生きものを展示しています。この水槽では、水族園で今年繁殖したサンゴタツとその親個体の展示を6月30日から始めました。

 サンゴタツは、函館以南から本州西部のアマモ場や砂泥地に生息している体長8cmほどのタツノオトシゴのなかまです。タツノオトシゴのなかまは、オスのおなかに子育てをするための袋「育児のう」があります。メスからもらった卵を育児のうで受精させ、卵が孵化するまで袋の中で守ります。展示しているサンゴタツは孵化したときは全長4mm程でしたが、バックヤードで約4か月育て、3~4cm程に成長させたものです。


オスのおなかから出てきて間もないころのサンゴタツ(体長約4㎜)

 水槽を観察する際には、ぜひ泳ぎかたにも注目してみてください。サンゴタツは一般的な魚類とはすがたかたちが大きく異なりますが、どのようにして泳いでいるのでしょう? よく見ると背中と眼の横に透明なひれがあり、このひれを細かく動かして水中を漂うように泳いでいるのがわかります。また、細長い尾をアマモの葉などにくるっと巻き付けて、体を支えているときもあります。アマモ場にはいたるところにつかまる場所があるので、小さな体を波に流されないようにするために、この尾のかたちはとても便利ですね。


2月生まれのサンゴタツ(左)とアマモにつかまる成魚(右)

 泳ぎかただけでなく、えさの食べかたもおもしろいのです。ストローのような口で小さな生きものを吸い込むようにして食べています。葛西臨海水族園では、イサザアミやブラインシュリンプという小さな甲殻類のなかまをえさとして与えています。えさは毎日与えていますので、食べているところを見られるかもしれません。

 海にくらす生きものはさまざまな姿かたちをしています。不思議なかたちに見える生きものも、住んでいる環境や食性などに適したすがたになっていることが多いのです。水族園に来た際は、水槽内をゆったりと泳ぐサンゴタツをぜひじっくり観察して、海でのくらしぶりも考えてみてくださいね。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 髙橋奏芽〕

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