葛西臨海水族園の「東京の海」エリアにある「伊豆七島の海 I」水槽では、色鮮やかなヤギやトサカなどのサンゴのなかまを展示しています。ヤギやトサカのなかまは体に無数の小さなイソギンチャクのようなポリプをもっており、プランクトンなどを捕らえて食べます。
この小さなポリプはそれぞれ一つずつが個体として独立しており、じつはヤギやトサカのなかまはたくさんの小さな個体が集まって1つの大きな体を作っています。また、種類によってポリプの色は赤や青などさまざまで、たくさんのヤギやトサカがポリプを広げたようすはまるで花畑のようにも見えます。
・記事「
咲きほこる『海のなかのお花畑』」2018年1月27日
このたびイボヤギが展示に加わりました。イボヤギは数十から数百のイソギンチャクが集まったような姿で、他のサンゴのなかまに比べて大きなポリプをもっています。黄色のポリプをきれいに広げた姿はまるで岩肌に咲く花にも見えます。
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ポリプを閉じているようす | ポリプを開いたようす |
展示当初はポリプを閉じていることが多く、あまり調子がよさそうに見えませんでした。そこですべての個体を一度バックヤードの水槽に移動して十分にえさを与え、今度は展示水槽で水通しがよい岩の隙間や岩肌にいくつか接着してみることにしました。その結果、ゴカイの血や小さなプランクトンを混ぜた特製ジュースを与えると、その「におい」を感じ取ってポリプをきれいに広げるようになり、水槽内がより華やかになりました。
ヤギやトサカなどのなかまを水槽にレイアウトをするときは、見栄えや水流の当たり具合を工夫するために頭を悩ませます。また、なかなか自分の思い描くようにはいかず、きれいにポリプが開くよう、何度も場所を変えて試行錯誤することもあります。そんな苦労もあって、きれいにポリプを広げてくれたときのうれしさは担当者としてひとしおです。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 遠藤周太〕
(2018年12月07日)