葛西臨海水族園「世界の海」エリア「深海4」の水槽ではマトウダイを展示しています。漢字で的鯛とも表されるとおり、体の真ん中に大きな丸い模様がついており、まさしく水中に浮かぶ的のようです。このマトウダイについては以前、こちらの記事でご紹介しました。
・「
マトウダイ、驚きの食事風景」(2016年1月30日)

水槽を見ると、マトウダイによく似た銀色にギラギラ光るきれいな魚がいます。これはカガミダイという魚で、水深40~800メートルほどに生息しています。よく観察すると、マトウダイに比べておでこのあたりがへこんでおり、顔がより“受け口”になっていることがわかります。
カガミダイもえさを食べるときにこの口を素早く伸ばし、一瞬で飲み込みます。水槽で与えている生きた小さなエビを見つけると、さっと近づいて目にもとまらぬ早さで丸呑みにしてしまいます。
マトウダイもカガミダイも一度に何十匹ものエビを食べてしまう大食漢ですが、カガミダイの体は薄いので、食べたものの形がお腹の表面に浮かび上がってくることもあります。
カガミダイは泳ぎ方もとても特徴的です。多くの魚は尾びれを使って身体をくねらせて泳ぎますが、マトウダイやカガミダイは尾びれを使わず、背びれと尻びれを使って泳ぎます。透明な背びれと尻びれを波打たせて進むことで体をくねらせることなく、まるで滑るように水中を進みます。この泳ぎのおかげでえさとなる生物に気づかれることなく近づくことできます。
生きているカガミダイは光があたるとその名のとおりギラギラ輝いて目立ちますが、薄暗い場所では周囲の景色を反射し、同じ色になって溶け込んでしまうため、えさや敵となる生き物から見えづらくなるようです。
この銀色の輝きは死ぬとすぐに失われてしまいます。飼育も難しいため、生きた状態で展示されることはなかなかありません。めったに見られないカガミダイの生きている美しい姿をぜひ見に来てください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介〕
(2018年04月20日)