関東周辺の海に潜ると、水深約10メートルより深くなるあたりから、ハッと息をのむ光景に出くわすことがあります。やや薄暗い海中に切り立つ岩壁一帯に、赤、朱、青、紫など、色鮮やかで幾重にも枝分かれした植物のような形をした生物の群落が見られるからです。
これらの多くはヤギ類やウミトサカ類などサンゴのなかまで、岩肌に体を固定してくらしています。よく見ると、その体には数ミリほどのイソギンチャクのようなポリプがあり、これがたくさん集まって枝分かれした一つの植物のような群体をなしています。

サンゴがつくる「海のなかのお花畑」
葛西臨海水族園の「東京の海」エリア「伊豆七島の海1」水槽では、そんな海の中のようすを再現するための工夫を続けています。昨年(2017年)10月には新たなポンプを設置し、広範囲に水流が行き渡るように改良しました。その結果、今までヤギ類やウミトサカ類がポリプをあまり開かせなかった場所、とくに岩壁付近にもよく水流があたるようになり、より多くのサンゴが体全体のポリプを開かせるようになりました。
これらのサンゴは、えさを求めてみずから移動できないので、流れてくる微細なプランクトンを待ち受けてポリプで捉えます。このため、多くのプランクトンが流れてくる潮通しのよい岩場に群生しているようです。飼育下でも、適度な水流があたることは多くのポリプを開かせる重要な要素のひとつといえます。
現在、水槽の岩壁では、体全体にある小さなポリプを広げた色鮮やかなサンゴにがつくり出す、「海のなかのお花畑」のような光景がご覧になれます。
水流の改良によってようやくポリプが十分開くようになりました。次はえさの改良にも取り組んでいきます。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 田辺信吾〕
(2018年01月27日)