葛西臨海水族園の「東京の海」エリアには、身近な水辺をテーマにした展示水槽があります。その中の「運河」水槽では、ボラやマハゼ、イダテンギンポといった東京湾奥部の運河でよく見られる魚やイソガニのなかまなどを展示していますが、今年(2017年)は夏から秋にかけて新たに加わった魚たちが水槽をにぎわせています。
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ヒイラギ | すだて |
まず1種目はヒイラギです。展示している個体は7月に千葉県木更津市の干潟でおこなわれている「すだて漁」に参加させてもらって採集しました。「すだて漁」とは、潮の満ち引きを利用して魚をとる漁法のことで、写真のような「すだて」をしかけて、入り込んで取り残された魚を干潮で水位が下がったときに捕まえます。「すだて遊び」として観光客向けにも営業しているので体験した方もいらっしゃると思います。
私も実際に採集に参加したのですが、ヒイラギのほかにも大きなダツのなかまやイカの子どもなどが入っていて、東京湾という私たちにとって身近な海にもこんなに多くの生物がくらしているのかと驚きました。採集して葛西のバックヤードに運んだヒイラギは、えさにもすぐに慣れて食べ始め、検疫を終了してまもなく水槽にデビューしました。
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サッパ | サッパについていた寄生虫 |
最近追加したもう1種はサッパです。こちらは8月に水族園のすぐ近くの河口で釣りによって採集しました。サッパにはダンゴムシのような寄生虫がついていることが多く、そのまま展示するわけにはいかないのですが、サッパの肌はとても弱いので網で捕まえて無理やり剥がすことはできません。
そこで、バックヤードで飼育しているあいだにサッパが暴れないように麻酔をかけて1尾ずつ寄生虫を取り除き、寄生虫がしがみついてできた小さな傷跡が目立たなくなるまで回復するのを待って、10月にようやく水槽にデビューしました。
ヒイラギとサッパはどちらも水槽内を活発に泳いでいて、水族園の「運河」をにぎわせています。ぜひご覧ください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 村松茉由子〕
(2017年11月24日)